〈コラム〉気象災害よるオフィスクローズ(3)

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人手不足(36)

「HR人事マネジメント Q&A」第48回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗

前々回つづく前回=4月26日号掲載=も「天候不良や災害によるオフィス臨時クローズ」を取り上げ、その末尾にて、オフィス臨時クローズポリシーと在宅勤務ポリシーは連動させておくかまたは予め整合性を持たせておくべき、さもないと人事管理に混乱をもたらすことになるからで、混乱の理由は会社が天候不良や災害発生当日に全従業員の出社停止を決めた際、総就労時間数で給与額が計算されるノンエグゼンプト従業員の立場では就労すなわち在宅勤務ができるか否かで当該月の報酬額が違ってくるためだと述べました。

大抵のケースではノンエグゼンプト従業員を対象に当該日には会社側が未使用の有給休暇(時間)を強制的に充てる権利を有することや未使用のシックリーブ(時間)を本人希望で使用できるようにするとのようなポリシーを設けていますが、従業員側としてはこれらを充てて有給時間をむざむざ消化させられるよりは就労したいでしょうし、既に有給休暇もシックリーブも使い果たした従業員なら猶更のこと、しれっとまたは抗ってでも在宅勤務を強行し働いた実績とする欲求が高まります。(注:従業員が就労したことを申告した場合、会社側はそれを無効にできない)

従ってたとえ有給時間を充てられる方針を有していてもポリシーにて当該日を在宅勤務とすることを従業員側の一存で決められるようになっているか或いはその判断部分が曖昧になっていれば誰しもが在宅勤務扱いに持ち込みたいわけです。もちろん一所懸命会社の為に働いてくれるかわいい従業員達に良かれと敢えてそのように仕向けている会社もありますが、人事管理の観点からみれば厚遇するべき方向性が違うと感じます。

能力あるまたは頑張る従業員らを厚遇するのは当たり前ですが、従業員がその日どこで働くのか直前まで把握できないのは明らかに管理ミスですし管理怠慢と映ります。また「今日は家で仕事するのだろう」と思っていたのに実は災害の被害に遭っていたとなれば監督不行届であり管理責任を問われることにもなり得ます。

従って冒頭に書いたように、オフィス臨時クローズポリシーと在宅勤務ポリシーを連動させた上で悪天候や災害が予想される場合、「本日(明日)は悪天候が予想されるためオフィスをクローズにします。在宅勤務が可能な従業員は在宅勤務を行ってください。在宅勤務が許可されていない従業員で有給休暇の使用を希望する者は速やかに申し出てください」などのアナウンスをしつつ、いつなんどきでも連絡が取れるよう日頃から体制整備しておくことが肝要となります。

(次回は6月28日号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう  富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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