〈コラム〉雇用情勢と今後の勤務形態(2)

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人手不足(39)

「HR人事マネジメント Q&A」第51回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗

勝手ながら、8月23日号掲載予定であった前回のコラム掲載は急遽お休みさせていただきました。このことで複数の読者から連絡を戴いたのですが、先月のお休みは私事ゆえにあしからずお詫びします。

さて、7月26日号掲載の記事では米国の雇用情勢と今後の勤務形態の動きを取り上げました。曰く「平均的な就労者の実に85%が現在出社している」と…。そしてこの調査結果は世の中の働き方が変わってきたと感じていた大勢をして再考する機会となりました。

2020年3月中に出された外出禁止令にて就労者の多くが半ば強制的に在宅勤務形態となり、それが暫く続いた後、在宅勤務の方が出社するより効率的だしそもそもワークライフバランスに合致する働き方だと思うに至った人は多いでしょう。ですが、そのような職を得て就労場所や就労時間帯をコントロールできる人はそれなりに能力のある経験者あるいは専門家に限られます。現にこれら就労者たちは20年以前であろうと在宅勤務を行っていたか或いは行えたわけで、翻って就労形態がIT技術の進歩に影響されない大半の仕事(職務)は出社という元の鞘に収まりつつあります。

即ち、在宅勤務(リモートワーク)職に就きたければ、雇用分類のうちの「Exempt職」謂わゆる自身の仕事を自身の裁量で以ってコントロールしつつ遂行し得る職種に就くしかなく、但しそれらに就くにはその分野で経験を積むか最初から周囲が認める高い能力を発揮するしかないのです。(注:内職や副業としてなら「Non-exempt職」謂われる労働時間単位で報酬を得る在宅勤務の仕事は存在しますが、ここでは本業であることを前提にします)

ところで直近の雇用状況を見てみると、6月は予想外に増加したものの7月に減少そして続く8月も減少、このことは予期された「雇用減速」通りの動きとなっています。

その裏付け証拠として挙げられるのが、連邦政府職をレイオフされ失業した数十万人が職を探し続けているものの求人件数も雇用数自体も減っていること。他に、新規の失業保険申請件数が加速度的に増えており受給者たちが新たな仕事を見つけられずに苦労していること。更には、Indeedのデータによれば労働市場の冷え込みと移民政策の世界的な引き締めにより海外の求職者たちは米国を含む自国以外の仕事への応募意欲が低下していること。

Work Instituteは退職面談の分析を毎年行っており、これによる24年の離職理由は、(1)キャリアパス関連(2)従業員個人および家族の健康問題(3)柔軟でない勤務形態(4)経営陣の行為行動(5)総報酬への不満─の順になります。この分析結果から、従業員の大方は会社側の「予防が可能な理由」によって離職しており、人材獲得が比較的容易である大手企業を除く大抵の会社は「予防措置」を講じるべきだし講じることができる筈です。

(次回は10月25日号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう  富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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