人手不足(41)
「HR人事マネジメント Q&A」第53回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗
前回─11月1日号掲載─の記事では、政府機関の閉鎖から予定されていた(9月の)雇用統計の発表が遅れていることで、続く将来の雇用も懸念視されている点を取り上げましたが、SHRM米国人事管理協会も同じく11月7日付ガイダンスにて「米国では2カ月連続で雇用の健全性を示す最も重要な指標を欠き、このことが企業リーダーたちをして不安に駆られさせている」と書いていました。
しかしながらドナルド・トランプ大統領が11月12日夜に予算法案に署名したことで、米国連邦政府は43日間に及ぶ閉鎖にようやく終止符が打たれました。これで経済も雇用も良い状態になることを願いますが、僅かな朗報として、民間情報筋から10月は緩やかな回復を示した数値が出されました。但し出されたは良いがAIや自動化技術の進歩のせい?で雇用…とりわけ若年層の雇用…が大幅に減っている傾向が止まらない状態にあることは続いています。
その若年層とは22~27歳を指しますが、雇用主たちが従業員の増員を控え出したことから、学位取得者の失業率はパンデミック期以外では実に12年ぶりの高水準にまで達し、特にIT関連の学位取得者が多い分野で状況が悪化、加えて会社でのエントリー/新人ポジションについては、「AIに置き換えられる可能性を懸念している」や「AIは人員削減を可能たらしめている」と謂った回答をする企業が増え始めてきていることが雇用の先行きの大きな懸念事項として挙がっています。
但し一方で、職務経験が豊富な者やAI露出度の低い職種ではこのような減少傾向が見られなかったことや、エントリー職が消えていく代わりに「AIツールを扱える新人」「より高度なスキルを持つ新人」が求められるようになってきており、業界によって事情が異なりはするものの、なにやら悲嘆にくれるような話ばかりではなさそうです。
さりとて良くないニュースは続くもので、先月10月28日にカリブ海域を襲ったハリケーンメリッサ。この災害による甚大な被害が少しずつ米国に波及しており、数週間後には詳細な被害額・復旧費用が公表される見込みのようですが、米国が抱え得るリスクとしては、再保険市場への影響、中米産農作物の生産が止まることでの輸入への影響、米国からの観光客に人気であった観光施設の被害による観光レジャーへのダメージ、これらのようなところからじわじわと国内経済や米国雇用に波及してくるのではないかと囁かれ始めています
(次回は12月13日号掲載)

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。