パンデミックが終わった後も、ニューヨーク市の小売市場に長期に渡る影響を与え続ける
新型コロナウイルスのパンデミックの影響は、全米、特にニューヨーク市の小売業界に取り返しのつかないダメージを与えています。ニューヨーク市は観光客、旅行者、通勤者、住民、訪問者等の多様な客層に対応する小売産業によって繁栄しています。ニューヨーク市の小売店の多くは、連邦政府による給与支払い保護支援策(Paycheck Protection Program、略称PPP)の受給資格を満たして資金援助を受けてさえなお、経済的な打撃を受けています。3月のニューヨーク市の最初のシャットダウン以来、多くの小売業者が経営を持続するだけにも苦労し、すでに多くの有名店が破産申告をしました。
小売店舗の最大の出費の一つが家賃です。場所柄ニューヨーク市は、景気が良い時でも家賃負担が大きい場所です。収入が全く無かったり大幅に減少した小売業者のほとんどが苦しんでいます。普段、店をひいきにしてくれる観光客、旅行者、通勤者、訪問者等の不在が続き、0~50%の操業率から得る収入で小売店舗の家賃を100%支払うのは、一般的に不可能です。
継続的な苦境に立たされている小売業者は、たとえ半年から1年の短期間でも相互に納得できる解決策について、大家と話し合いを持つべきです。小売テナントが閉店退去し、店舗が空きスペースになってしまっては、得する人は誰もいません。今は特に、大家とテナントの両者が小売業の成功と安定を望んでいます。
考慮すべき優先事項と義務の事情は大家によって違います。あらゆるケースに対応できる万能解決策はありませんが、全てのオプションについて誠意をもって話し合う必要があります。大家とテナントの両者にとって、最終的に相互に合意できる解決策になるかどうかは、主にビジネス上の判断になるでしょう。
COVID-19は既存の小売テナントに影響を与えただけでなく、恐らく当分の間、ニューヨーク市の新規小売テナントにも影響を与えるでしょう。低家賃と見られている現在の状況を利用して、ニューヨーク市で小売店舗の賃貸契約を考えている方は、家賃額だけが小売店舗賃貸の決定要素ではないことを肝に銘じておくべきです。例えば、大家が小売テナントに伝達してくる店舗にかかる固定資産税は、家賃に加えてかかる出費です。ニューヨーク市が直面している財政的困難を考慮すると、今後数年間は、市政府が機会あるごとに増税による資金調達を検討することが予想されます。これらの増税に、商業ビルにかかる固定資産税が含まれても不思議ではなく、もしこれが現実になれば、この税金は最終的に小売テナントの月々の家賃に加えた負担となります。
このようにCOVID-19は、パンデミックが終わった後も、ニューヨーク市の小売市場に長期に渡る影響を与え続けるでしょう。
(弁護士 マリアン・ディクソン)
(次回は9月第1週号掲載)
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