圧倒的多数の人々にとって少なくとも連邦遺産税の心配はない
米国における2017年の税法改正は、2018年1月1日以降に亡くなる多くの人々に更なる減税をもたらすことになるでしょう。これは、かなりの資産額を有する者には、個人財産管理の上で朗報です。遺産税は、市民権や在留資格の種類によって、適用されるルールが違いますので注意してください。しかし、端的に言うと、大半の人々は連邦遺産税を支払う必要なく資産を次世代に引き渡すことができるでしょう。
2017年度の、米国市民と米永住者(グリーンカード保持者)に対する個人遺産税及び贈与税の非課税対象額は549万ドルまででした。2017年の改正に伴い、遺産税と贈与税の非課税対象額は倍増し(年次、インフレに伴う調整がなされる)、2018年度の非課税対象額は1118万ドルまで、2019年度は1140万ドルまでとなりました。倍増した非課税対象額は、この法律が失効する2025年まで続きますが、その後は従来の非課税レベルに戻る可能性があります(インフレに伴う調整はなされます)。これは2018年から2025年までに死亡する圧倒的多数の個人は、連邦遺産税を一切支払わなくてもよいことを意味します。非課税対象額を超える資産に対しては、税率40%で課税されます。
日米間の租税条約のおかげで、大半の日本人は、米国永住権を持っていなくても、全世界的に所有する資産額が非課税対象額の範囲内であれば、他界したときの遺産税が免除となります。なぜならば、故人の米国内資産にかかる税金は、故人の全世界的に所有する資産に比例して非課税となるからです。例を挙げて説明してみましょう。例えば全世界的に1000万ドルの資産を所有する日本国籍の人物が2019年に死亡するとします。しかし、その内の600万ドル分の資産は米国内にあります。その場合、この人物の非課税対象額は684万ドルまでです。つまり、この人物の全資産の60%(600万ドル/1000万ドル)は米国内にあるため、2019年度の非課税対象額1140万ドルの60%である684万ドルまでが非課税となります。従って、この人物は連邦遺産税を支払う必要はありません。
私たちのほとんどは、米国の連邦遺産税の心配をする必要はありません。もしあなたが非常に裕福で遺産税や贈与税の可能性を心配する必要がある場合は、税金を最小限にとどめるための対策を個人財産管理の専門家に相談することをお勧めします。
上記の情報は、連邦遺産税と連邦贈与税にかかることですのでご注意ください。米国では、ニューヨークを含む多くの州で遺産税と贈与税が課せられます。税制は州によって異なりますが、圧倒的多数の人々にとって少なくとも連邦遺産税の心配はないでしょう。
(弁護士 マシュー・プレソー)
(次回は2月第1週号掲載)
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