永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第103回
先日、ミーティングで久しぶりにマンハッタンに行って来ました。
アポイントメントは水曜日午後6時だったのですが、私の在住しているNJ州の街からマンハッタンへの公共交通機関の頻度も少なくなっていると聞いていましたので、いつもより早めに出発致しました。
意外と順調に乗り継ぎができ30分ほど前に到着したので、タイムズスクエアの辺りまで歩いてみました。新型コロナウイルス前なら仕事帰りの人たちや観光客でごった返しているのに、本当に人が少なく驚きました。
しばらく歩いて周りを見てもデリバリートラックばかりで、観光客はもちろん、地元ニューヨーカーと思われる人たちの姿もまばらでした。
NY市では人口流出が進んでいるようで、ニューヨークタイムズの情報によると3月から5月の間で約42万人(NY市の約5%の人口)が流出したと言われています。
新型コロナウイルスの影響でテレワークが進みオフィスに行く必要がなくなったことで、このまま在宅勤務が定着するのであればNY市の狭いアパートに高い家賃を払って住むよりも郊外に引っ越したほうが良いと判断する人が増えてきているといいます。
在宅勤務の理由以外にもNY市の有名レストランやブロードウェイミュージカルなどの有名シアター、美術館、博物館などが閉鎖しており、NY市自体の街の魅力が落ちているということも理由のようです。
このように空洞化が進むと同時にマンハッタンの高級アパートのオーナーは新規契約などに苦労をしているようで前年比較では2割以上下がっているという情報もあります。
そのためレントを下げたり、フリーレント期間を増やしたりと新規獲得に工夫をしているようですが、モゲージを組みながら投資目的で不動産経営をしているオーナーにとってはかなり厳しい状況です。
一方このNY市の空洞化の影響で、引っ越し業者の稼働率は前年の同時期と比較すると5割増しということで、業種によって明暗が出ているようです。
NY市はコロナ禍での救済措置で財政が苦しい状況ですが、この空洞化はさらに大きなマイナス要因になります。
現在、NY市長のデブラシオ氏は赤字の補填のために富裕層への増税を提案していますが、市の税収割合をみてみるとNY市の1%に当たる人口の富裕層が、NY州の50%の州税を支払っているという現実があり、NY州知事のクモオ氏は富裕層のNY市からの逃避だけでなく、NY州外逃避の可能性もあるとして反対しています。
ビジネスからの税収も期待できない状況なので、この先の判断が難しいところです。
(次回は10月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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