〈コラム〉会社形態の選択

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Nagano Morita a Division of Prager Metis 日下武「ビジネスのツボ」 第115回

ニューヨーク市は2021年7月1日から経済活動の全面再開を発表しました。これから雇用が増えていく傾向にあると思いますが、事業を始めたいという相談も増えています。

米国で事業をする時に注意して決めなければならないのが、会社形態です。いろいろな会社形態がありますが、その中でも小規模で事業をする場合は、LLC(Limited liability company)という形態を選択することがメリットが大きいと言われています。そこで、今回はこのLLCを中心に会社形態について考えていきます。

まず、LLCですが、有限責任というのが大きな利点です。LLCを設立することにより、会社資産と個人資産の間に壁を作ることができ、会社に何か問題があった場合でも、個人資産を守ることができます。次に、二重課税の回避、つまり節税ということが挙げられます。

有限責任という利点だけをとると、通常の株式会社形態C─Corp(subchapter C corporation)も同じくオーナーは有限責任ですが、C─Corpでは、連邦法人税が課せられます。LLCでは、オーナーが2人以上いる場合でも、LLCはパートナーシップ(Partnership)の会社形態と同様に連邦法人税を回避することができます。

3番目の利点としては、LLCは基本的に経営者や意思決定において、あまり規定がありません。利益または損失や配当にあたっても、オーナーたちで決めることができ、非常に柔軟性があるといえます。C─Corpなら所有権限に応じて利益・損失を配分しなければならないところも、LLCであれば、その配分が実態的な経済的効果を有する限り、オーナーたちはあらゆる面で利益・損失配分にも同意することができます。ただし、IRSの規定で、LLCの利益と損失がオーナーの出資配分と異なる場合は、ある時点でTaxの再調整またはTax advantageの再配分が行われることになります。

先に書いた有限責任、二重課税の回避といった利点は、S─Corp(subchapter S corporation)といわれる事業形態でも同様ですが、LLCとの違いは、オーナー資格の柔軟性というのが挙げられます。S―Corpの場合、米国民か住民、または特別の信託しかオーナーになることができません。さらに、そのオーナーは100人を超えることができません。それに対し、LLCの場合は、誰でもオーナーになることができ、その他にもオーナー資格は非常に柔軟と言えます。

LLCという事業形態は、たくさんのことでオーナーに有利になっていますが、S―Corpは、給与税で有利になることもありますので、会社を設立する前に、専門家にご相談することをお勧めいたします。

(次回は10月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) Prager Metis CPAs Boston/NJ マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブpragermetis.jp Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@pragermetis.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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