「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第56回
和食がユネスコの無形文化遺産に選ばれたことからも分かるとおり、日本食というのは世界で認められる食文化です。もちろんアメリカでも日本食のイメージが健康的、見た目も美しいところから、広く受け入れられ、イタリア料理を押さえて人気1位という調査結果も出ています。このことからも、日本からアメリカに進出を目指している食品関連の企業が増加しています。どの企業もすばらしい商品で勝負しようと考えています。今回はニューヨークの一般的な日本食市場について触れてみたいと思います。
ニューヨークでは競争が激しく、更に家賃が高いため他店と差別化を図っていかなければ、直ぐに経営難に落ち込んでしまいます。普通の店は生き残れない傾向にあり、薄利多売か高級店かの2極化が進んでいます。
マンハッタンの寿司レストランを例に取ると昔は日本人オーナーが多かったのですが、寿司は儲かるという理由で非日本人の日本食レストランが多く開店し、日本食ブームに火をつけたまでは良かったのですが、中には見よう見まねで覚えた寿司をできるだけ安く出す店も増加し、質がどんどん下がりました。それでも、その頃は質より量を重視する消費者が多かったことから、マンハッタンの寿司屋の半分以上は本来の日本食の味から外れた日本食レストランが流行る状態になりました。
ただ、日本食ブームが長く続き、最近では消費者の日本食についての知識が増え、日本人、非日本人に関わらず、本格志向へ向いつつあるので、日本食のレベルがどんどん上がってきています。本格志向のシェフたちは、できるだけ日本産食材の使用を好みますが、問題点は価格だといいます。
多くのレストランシェフは、日本産ということを第一に考えているのではなく、味や質にこだわっているので、質が上がれば現地食材、または第三国からの輸入食材でも構わないという声も聞きます。これから日本産食材を売り込むために必要なのは、他の商品との差別化です。
日本産の質が良いのは誰もが認めるところですが、説明が不足しているように思えます。目立つことをあまり良いことと考えない日本人の感覚ですが、アメリカで成功するには目立つことが鍵となると思います。
日本産の良さを理解してもらうための広告を作成し、その食材ができるまでのストーリーや、他の商品との違いをアピールすることで、消費者の購買意欲を掻き立てる必要があります。
皆さんの成功を祈ります。
(次回は10月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ