「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第67回
最近、米アマゾン・ドットコムがアメリカを代表する高級スーパーマーケットのホールフーズを買収するということで世間を騒がせていますが、こういった買収による業務拡大はどの業界でも進んでいるようです。大きな買収のニュースばかり目立ちますが、実はアメリカでは何百億ドルという買収の話だけではなく、数十万ドル単位でも買収は活発に行われています。
私の場合は日本語のできる会計士という立場から、日本の飲食業関係の売買に関わる仕事に多く携わってきました。今でも大小さまざまな相談案件が増えてきています。ただ、最近は少し売買の目的や形態が変わってきているように思います。今までは日本からの飲食企業進出の場合は、日本で作ったブランドを重視して、日本の飲食のイメージをそのまま持ってくるので、アメリカの既存にある日本食レストランを買収するということはあまりありませんでした。なので、ビジネスをやりたいロケーション探しから始めて、もし、そこにピザ屋さんやカフェなどがあるとそのビジネスを買収して、新たに日本食を始めるということが一般的でした。
日本基盤の飲食業グループの場合は目的がグループの海外出店による日本グループのブランディングとの相乗効果の意味合いが強いからです。グループの海外進出により、日本の店舗も話題性が増し、集客増加だけではなく、世界で働きたいという良い人材も集まる効果があるようです。こういった日本基盤の飲食業グループの進出や既存日本食店の競争激化もあり、ニューヨークではレベルの高い日本食企業の数が急増しました。最近ではその店舗を買収するという案件が増加しています。
繁盛店の買収の多くの場合は買収後もその店名をそのまま使用して、経営者だけが変わるという方法をとります。オペレーションはそのままですので、新規に従業員を募集する手間やトレーニングの時間も節約できます。
現在、ニューヨークでは良い人材の確保がとても難しいので有効です。さらに新しくオープンの広告も出すことなく、既存の評判は確保したままでスタートできます。大きく黒字を出しているレストランの買収であれば、買収価格によりますが、比較的短期間で買収額を回収できる可能性もあります。ただ、既存企業の買収にはメリットだけではなく、リスクも伴いますので、信頼のできる専門家への相談は欠かせません。専門家に相談の上でリスクを確実に理解をして進めることがポイントです。
(次回は10月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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