〈コラム〉米国税制改正 常日ごろから税金の情報収集を

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第71回

2017年12月22日にトランプ大統領が税制改正法案に署名をしました。税率が下がり多くの企業や個人がこの改正の恩恵を受けると言われいますが、具体的にはまだどのようなことが改正されるのか知らない人が多いかもしれません。今回はビジネスに関する主なものについてみていきたいと思います。

まず、法人の税率についてですが、2017年度末までは累進課税率で15%、25%、34%、35%だったのですが、2018年1月1日に始まる課税年度以降は一律21%となります。法人にとってこの税率の引き下げは大きなインパクトになると思います。繰越欠損金の使用制限については、旧法では2年繰戻20年繰越ということができました。そして、当年に課税所得があった場合、繰越欠損金がそれを上回る場合は、繰越欠損金を全額使用して当年の課税所得と相殺することができました。

今回の改正法では、繰越欠損金は当年の課税所得の80%までしか控除することができなくなり、課税所得が発生した年は税金の支払いも発生するようになります。2年繰戻20年繰越についても2018年1月1日以降に発生する欠損金に関しては、2年繰り戻すことはできなくなります。ただし、20年繰越という制限はなくなり、無制限に繰越が認められるようになります。固定資産の償却については、2017年9月28日以降に取得、そして事業に使用されたという条件で適格固定資産については、今回の改正法で一括償却ができます。

2017年9月27日以前に購入した適格固定資産についてはどうなるかというと従来の50%の償却を選択することができます。改正法の全額一括償却については2022年度末までの制限がついています。2023年度以降は80%から20%と段階的に即時償却の額が減額されていく予定です。このほかにも改正法はたくさんの項目がありますが、情報を得ることにより、今までになかった節税をする機会があるかもしれません。逆に改正法を勉強しなかったために2018年度以降の法人税の申告時に驚くことにならないように、今から情報を取得する努力は必要だと思います。

法人税だけに関わらず、今回の税制改正には個人税法も含まれています。税率は多少下がり、standard deduction(基礎控除)が2倍になるので税金がかなり減額されると思っている方も多いと思いますが、一方でItemized deduction(項目別控除)に制限が掛かり、Personal Exemption(人的控除)が廃止されるので、両手をあげて喜べない方もいるかもしれません。常日ごろから税金の情報収集をすることが大切です。

(次回は2月第2週号掲載)

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〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブwww.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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