「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第72回
アメリカ全体的に最低賃金は上昇傾向にありますが、ニューヨーク市では11人以上を雇用する一般的な最低賃金が2018年12月31日から15ドルまで上がる予定です。16年12月31日から比べると11ドルから4ドル上がるということで、最低賃金に合わせた従業員をたくさん雇用しているカフェやレストラン、グロッサリーの経営者の立場になれば36%アップというのはかなりのダメージになるのではないでしょうか。
最低賃金上昇の対抗策として、他の経費の見直し、営業時間の短縮、雇用人数のカットなどを提案するコンサルタントの方もいるようですが、私は逆に攻めに転じて欲しいと思います。
簡単に言いますと、サービスの質を上げるということです。そうすると顧客満足度もあがり、値上げもしやすくなります。ある日本のカジュアルで珈琲がおいしいと評判のお店があったのですが、安価だったため、従業員の時給も上げることができず、利益と人員数の問題で経営難におちいっていました。面接には高校生やフリーターなどが来るのですが、賃金が安いのもあってモチベーションも低く、雇ってもすぐ辞めて行ったようです。そこで、思い切って少し相場より高い給与で正社員を募集したところ、珈琲の勉強をしたいという人が来ました。その後、その人は珈琲の知識をどんどん付けていき、珈琲好きのお客さんたちの質問にも楽しく答えていくうちに、お客さんたちからのリクエストで「値段が高くても良いから、上級な珈琲豆を仕入れて欲しい」ということで、どんどん珈琲専門店として有名になっていったようです。アルバイト募集を掛けると珈琲に興味を持っている候補者が増え、雇用したアルバイトさんたちからユニフォームを作ろう、接客マナーを考えよう、どうしたらお客さんの満足度がさらに上がるかなど、店のレベルアップのアイデアがたくさんでて、3年後にはトップレベルの高級珈琲店に成長したと聞きました。
経営者のお金を掛けてもレベルアップをするという姿勢が、経営難という立場からトップへと成功した理由だと思います。ニューヨークはたくさんのお金持ちがいます。高品質なサービスと技術があれば、値段は高くても顧客は繁盛しているお店がたくさん存在しています。薄利多売の発想で考えるよりは、ユニークなアイデアで高価格でもリピーターを掴むというのがニューヨークにあった発想だと思います。皆さんの成功を祈ります。
(次回は3月第2週掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ