「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第78回
買い物が好きな友人がいるのですが、いつもその計算の速さに驚かされます。その友人ですが、コンドミニアムが欲しくて、最近お金をセーブしていました。
一緒にランチに行ったときのことですが、そのお店はセルフサービス系で、Basicな海苔弁当にオプションで有料のおかずをつけられるシステムでした。海苔弁当自体は5ドルなのですが、おかずが一品2.50ドルで売られています。友人は、「おかずが本体の50%もするのか。高いなぁ」とおかずを買うか買わないかとても迷っていました。結局、夢のコンドミニアム購入のため、おかずを諦めました。
数日後、同じ友人が車の買い替えのため、カーディーラーについていって欲しいと頼まれ、一緒に行きました。本体価格2万ドルほどの車を買うことになったのですが、セールスの人が、今なら特別にナビゲーションを1000ドルで付けてあげるとオファーを貰いました。ただ、友人は前の車で使っていた取り外し式のナビゲーションがあったため、最初からナビゲーションは必要ないといっていました。当然、夢のコンドミニアムのため、そのようなオプションを断ると思ったら、友人はそのオファーを受け入れてしまいました。「本体の5%の価格でナビゲーションが付くなんて、得した!」と大喜びです。私からすると、1000ドルあったら、ランチのおかず400回買えるのにと思いますが、このように、本体ベースの率に捕らわれて、実際の金額を見失ってしまうようなことを行動経済学の世界では、メンタル・アカウンティングというらしいです。
他にも入手方法によって、お金の価値が変わることがあるようです。例えば、夢のコンドミニアム購入のために毎月の給与から2000ドルを貯金するとします。かなり苦しい貯金ですが、早く頭金を作るために一所懸命働いて、10カ月かけてコツコツ2万ドルが貯まりました。そんな時、たまたま知り合いに勧められて買ったビットコインが急激に値上がりして、予定していなかった2万ドルの副収入が入りました。「やった! パーッと行こう!」と外食や高級ブランド品に使ってしまい、2万ドルは羽が生えたように飛んでいってしまいました。
一所懸命働いて貯めた2万ドルと幸運で入った2万ドルは、客観的な金額は同じです。ただ、本人としてはやはり違う価値に見えてしまったようです。計算に強いのも成功する秘訣ですが、こういったメンタル・アカウンティングに強くなる必要もあるかもしれません。
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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