永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第86回
皆様、タックスリターンは済ませましたでしょうか。この時期、私は会計士という職業柄、たくさんのタックスリターンを作成します。
会計士になりたての頃は4月15日が近くなるにつれて追いかけられる気分で眠れないこともよくありました。新人という事もあり、上司に質問することも気を遣い、一人で仕事を溜め込むことも多くありました。やっていけるのかなと思い始めた頃、上司が私に仕事を効率よく処理できる段取りを丁寧に教えてくれたり、事務所の増員をしてくれたりして、効率がどんどん上がりました。今ではクライアントは増えているにもかかわらず、昔ほど残業はしなくなりました。
日本では2016年9月に働き方改革実現推進室が設置され、働き方改革の取り組みが提唱されています。日本では労働力の主力となる生産年齢人口(15~64歳)が想定していた以上の勢いで減少しているようで、予想ではピークの2013年8000万人に比較すると2060年には4500万人を下回るという見込みが出ているようです。
政府の対応策として、今の労働市場に参加していない女性や高齢者などの働き手を増やす、出生率を上げて将来の働き手を増やす、労働生産性を上げることが掲げられています。この中の労働生産性の向上というところで長時間労働の改善ということが見直されていて、残業時間の上限規制が進んでいるようです。
ある企業の現場では、仕事量はそのままで増員もできずに決められている労働時間内で仕事をこなすのは難しいと聞きます。結局、上司からは「法律できまったので、残業はしないでください。でも今まで同じ仕事量はこなしてください」となっているようです。残業すると問題になるので仕事を家に持ち帰り、残業代なしで仕事をしている社員も多いと聞きます。
私個人の意見では、日本人は特に責任感が強いイメージがありますので、結局賃金なし労働時間が増加し、労働条件が悪くなっているような気がしてなりません。先日、ニュースで人工衛星の管制業務に携わっていた31歳男性が過労自殺で亡くなったと聞きました。残業を減らせという叱責を受けていたようです。
働き方改革が推し進められていく中、残業時間減少だけに目が向けられていますが、一人ひとりの就労環境を見つめなおし、残業をなくしても仕事ができる環境を整えることが先決だと思います。まず、就業時間内でできる仕事量を会社と従業員で話し合い、それから残業時間の問題に取り組むべきだと思います。
(次回は5月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
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