〈コラム〉税金の趣旨を知って、負担感を下げましょう

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永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第89回

日本のニュースで10月から消費税率が10%に引き上げられることについて話題になっています。

消費税法がはじめて施行された頃は子供だったので、なけなしのお小遣いで買っていた漫画の単行本が値上がりしたことがショックでした。商品の値段が上がることだけを考えると消費者だけが損をした気になります。ただ、増税により商品価格が上がると企業は商品の販売が難しくなります。経済や生活が苦しくなると政府は国民の反感をかうことになり支持率が下がってしまいます。目の前のことだけを考えると誰も増税はしたくないのです。

実際に消費税の引き上げは2015年10月に予定されていましたが、4年間先送りされて今回のタイミングになっています。しかし少子高齢化問題が深刻化していく中で対策をしておかなければ手遅れになってしまいます。

米国では売上税(セールスタックス)というものがあります。州の税率とローカルの税率で構成されていて、税率が異なったり、課税されない州やローカルもありますが、例えば、ニュ-ヨーク・マンハッタンでは州とローカルを合わせた売上税率は8.875%(特別なケースは除く)になります。

マンハッタンは家賃や最低賃金も高く、サービスの競争も激しいので、どうしても物価は高くなってしまいます。せめて州には売上税率を抑えてほしいと考えたりもしますが、日本の消費税と比較すると米国の売上税のほうが製品が手元に届くまでの課税回数が少ないようです。

一般的に製品が消費者に届くまでにいくつもの業者を通します。製品を作る製造業者、流通させる卸売業者、販売する小売業者などです。日本の消費税はこの流れの全ての段階で課税されます。それと比べ米国の売上税は最終消費者に届く段階のみに課税されます。

米国でも税収金額を上げるために全ての段階での課税の意見もあるようですが、税金を多く回収することだけが経済発展の良案とは考えていないようです。米国ではアメリカンドリームを信じて毎日たくさんの企業が立ち上げられています。そのような企業に税金面で優遇することで事業を成功に導き、米国全体の成長につなげようとする考え方のようです。

それを知ると物価はできるだけ抑えられているような気がして、売上税の負担感が軽減されます。日本の消費税、米国の売上税にしても結局は私たちの将来や生活向上を考えての税金なので、その趣旨を理解して自分自身の負担感を取り除くことも大切です。

(次回は8月第3週号掲載)

business-kusaka-takeshi〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブwww.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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