保護者の果たす役割が大きい
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
2020年は、世界中が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、これまで経験したことのない事態に陥りました。3月以降、学校も閉鎖が続き、オンライン授業が行われることになりました。未だ新型コロナウイルスの終息は先行きが不透明ですが、一部の学校が制限付の対面授業を始めています。しかし、多くの現地校や補習授業校では、すべての授業がオンラインで進められており、2021年もこの状態がしばらく続くと思われます。
このように、現地校でオンライン授業が継続していることで、学年相応の学力の定着に支障を来たしている子どもがいることは否めません。PCの操作や画面越しの授業になじめないという問題を抱えている子どももいますし、個別指導が受けにくく、自力で学習する必要があるため、学力の格差が広がっているとも言われています。また、滞在年数の短い駐在員の子どもの中には、英語力が向上しないという問題も耳にしています。通常であれば、授業時間のみならず、休憩時間や課外活動で生きた英語を使う機会がありますが、それらが失われているためです。また、新型コロナウイルス感染症拡大によって、TOEFLや英検などの受験機会が減少していることも影響しています。
一方、補習授業校も現地校と同様な問題を抱えています。学校閉鎖により新年度開始が遅れた学校も多いですし、オンライン授業は通常授業時より授業時間数が少ない学校もあります。少ない授業日数・授業時間数で、学習指導要領に定められた年間の学習内容を網羅しようとすると、かなりスピーディーに授業を進めたり、学習内容を家庭学習に委ねたりせざるを得ないという問題が生じています。学年相応の学力が定着していない子どもや学力格差も目立ちます。通常授業と比べ、日本語で話したり書いたりする時間も少なく、日本語力が伸び悩んでしまっているという声も聞きます。
現地校や補習授業校でのオンライン授業は、2021年もしばらく続くでしょう。このような状況で学力の定着や英語力・日本語力の向上を図るためには、保護者の果たす役割が大きく、次のようなことを心掛けると良いでしょう。
1)オンライン授業の受講で子どもがストレスを感じることのないようインターネット回線やPCの環境を整えること。
2)周囲に邪魔されることなく学習に集中できるスペース(勉強部屋)を確保すること。
3)学齢や性格を考慮し、授業中、必要に応じてサポートをすること。
4)家庭学習の取り組みを確認し、サポートすること。
5)英語を話す機会を作るため、課外活動や習い事などが可能であれば、積極的に参加すること。
6)親以外の大人と日本語で話す機会を設けること。
新型コロナ禍は先が見えない状況ですが、親子で一緒に乗り切っていただきたいと思います。
(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)
執筆者のプロフィール
河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当などを務める。他にサンディエゴ補習授業校教務主任。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当などを務める。他にサンディエゴ補習授業校教務主任。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org