高校生で帰国した場合の大学入試

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帰国生入試以外の入試方式も視野に入れ、選択肢を広げる必要がある

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人


国内生の大学入試では、国公立大学は1月実施の大学入学共通テストで国語・数学・外国語・理科・地歴公民を受験し、さらに2月実施の2次試験では多くの大学の文系学部志望者は国語・数学または地歴公民・外国語の3教科、理系学部志望者は数学・理科・外国語の3教科を受験する必要があります。また、私立大学も国公立大学の2次試験と同様な3教科の試験を受験しなければなりません。しかし、帰国生大学入試では国公立大学も私立大学も、多くの大学の文系学部志望者は小論文と面接のみ(英語や国語を課す大学・学部もある。)、理系学部志望者は数学・理科と面接のみ(英語や小論文を課す大学・学部もある。)を受験すればよく、受験生の負担が軽くなっています。国公立大学を受験する場合でも大学入学共通テストは不要です。

ただし、帰国生入試の出願資格として、ほとんどの国公立大学と早稲田大学や慶應義塾大学の一部の学部などでは、現地校の最終学年を含む2学年以上在学したことを条件としています。したがって、帰国生入試を受験できるのは、早稲田大学や慶應義塾大学の一部の学部など以外の私立大学に限られます。

また、現地校の卒業前に帰国した場合に大学入試を受験するためには、日本の高校に在学し卒業する必要があります。加えて、帰国生大学入試では日本の高校の在学期間を制限している大学・学部もありますので注意が必要です。日本の高校での在学期間が2年以内(未満)とか1年半以内(未満)という条件の場合、高校2年生への編入なら問題ありませんが、高校1年生に編入した場合には受験できないことになります。また、中には1年以内(未満)という条件の大学・学部もあり、この場合は、高校3年生に編入していないと受験できません。高校3年生への編入学は、受け入れ高校が少なく、編入するのが大変です。

高校生で帰国してから帰国生入試を受験する場合には、このような条件がありますが、AO入試やグローバル入試を実施している大学・学部であれば日本の高校卒業見込みという資格での受験が可能です。AO入試はアドミッション・オフィス入試の略称で、アメリカの大学の入試方式に類似しており、書類選考を重視します。小論文や面接を課す大学もありますが、帰国生大学入試と同様な受験対策ができるので負担が軽いです。また、グローバル入試もAO入試と同様に書類選考と小論文や面接のみです。出願書類としてTOEFLのスコアなど英語力を証明する書類を提出させる大学・学部もありますが、英語圏からの帰国生は有利だともいえます。

また、私立大学は国内生と一緒に一般入試を受験して合格している帰国生も目立ちます。文系学部では国語・外国語と地歴公民または数学の3教科受験が一般的ですが、外国語の配点ウエイトが高く50%を占めるという大学・学部もあり、帰国生でも英語が得意であれば、高得点を上げられるからです。さらに、文系学部には、国語・外国語の2教科のみとという大学・学部もあり、受験教科を絞って勉強することもできます。理系学部でも数学・理科・外国語の3教科での受験ができ、数学の実力が高ければ合格できるというケースも見られます。1月に実施される大学入学共通テストも国公立大学受験には全教科が必要ですが、私立大学の場合、2~3教科の得点のみで合否判定をするという入試方式のある大学・学部もあります。

このように、高校生で帰国した場合には、帰国生入試のみでなく、AO入試やグローバル入試など一般入試も視野に入れ、選択肢を広げて受験すると良いでしょう。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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