帰国生の英語力の保持・向上が期待できる
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
文部科学省は、2027年度までに達成を目指す中高生の英語力水準について、中学3年は「実用英語技能検定(英検)3級」相当以上、高校3年は「英検準2級」相当以上の生徒割合を、それぞれ「6割以上」とする方針を固めました。また、小学校では2020年度、中学校では2021年度、高等学校では2022年度から学習指導要領が改訂され、英語力の強化が図られています。
新学習指導要領では、従来は小学5・6年生を対象として行われていた「外国語活動(英語)」の授業が前倒しとなり、小学3・4年次からスタートしています。小学5・6年次からは英語が教科となり、「外国語科(英語)」が導入されています。小学3・4年では「聞くこと」と「話すこと」が中心で、小学5・6年では「読むこと」と「書くこと」が追加されています。また、中学の一部の内容、助動詞(can, doなど)で始まる疑問文/不規則動詞の過去形(I went to …など)が移行し、600~700語の語彙を履修します。
中学校では、授業は英語で行うことが基本となり、高校の一部の内容、主語+動詞+目的語+原形不定詞、感嘆文、現在完了進行形、仮定法などが移行し、学ぶ語彙は旧課程の1,200語程度から1,600~1,800語程度に増加しています。
高校では、科目構成の変更や新設があり、英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ・Ⅲと論理・表現Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの6科目となり、学ぶ語彙は旧課程の1,800語程度から1,800~2,500語程度に増加しています。
このように日本の学校の英語教育のレベルが上がっていることは、英語圏からの帰国生にとっては朗報だと言えるでしょう。また、このような動きに伴い、中学・高校・大学入試における英語の出題にも影響が及んでいます。大学入試センター試験に代わった大学入学共通テストでは、4技能(読む・書く・聞く・話す)の実力を図るために英検やTOEFLなどの外部機関のテストの導入は見送られましたが、4技能の実力を図ることは引き続き検討されています。また、東京外国語大学や東京女子大学では英語スピーキングテストを実施していますし、昨年11月の都立高校入試の英語では、スピーキングテストが実施されました。英語リスニングテストの実施はすでに広まりつつありますが、英語スピーキングテストも増えると思われます。
一方、帰国生入試においては、すでに英検やTOEFLを利用しているケースがあります。大学入試においては、TOEFLの重要性が高まっており、TOEFLのスコアを出願基準点として利用している大学や、英語の試験の代わりにTOEFLのスコア提出を必須とする大学が増えています。出願基準点としてTOEFLのスコアを利用している大学では、120点満点中60~70点台のスコアを基準点としています。TOEFLのスコアの提出を必須としている大学では合格者の多くが80点以上や100点以上のスコアを獲得しています。高校入試においては、英検準1級以上の合格やTOEFLのスコアが79点以上であれば推薦入試の出願資格を与える学校や英語の試験を免除する学校もあります。海外滞在中の英語力の向上が帰国後の進学で有利となると言えます。
(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
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