帰国後も英語で学ぶためには高度な英語力が必要
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
皆様もご存じのとおり、日本では2020年度から始まった文部科学省の学習指導要領の改訂により、英語教育が大きく変わりました。小学校3・4年生で外国語活動が導入され、小学校5・6年生で英語が必修教科となり、中学校や高等学校でも、より高度な使える英語力を身に付けさせようという指導が実践されています。このことにより、英語圏からの帰国生にとっては、帰国後に日本の学校で学ぶ英語が物足りないというような問題は緩和されるともいえます。しかし、学校によってはネイディブの教師による授業が多くはなく、帰国後の英語力を保持・向上を期待できないこともあるようです。
一方で、政府はグローバルな人材を育成するという目的で、国際的に通用する大学入学資格である国際バカロレア(IB)資格を取得できるプログラムを導入する学校を200校にすることや、10年後までに外国人留学生の受け入れを年間40万人に、海外に留学する日本人学生を年間50万人にすることを目指すなどを計画しています。これに伴い、国際バカロレア資格取得プログラムの授業を英語で行う学校や、英語の授業のみで卒業できる英語学位取得プログラムを導入する大学などが増加しています。つまり、日本に帰国後も海外の学校と同様に英語で学ぶことのできる環境も充実しつつあるのです。
では、このような学校に入学するためには、どの程度の英語力があればよいのでしょうか。
まず、国際バカロレア資格取得プログラムを英語で受講するためには、CEFR(セファール)のB2相当の英語力が必要とされています。CEFRは「Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment」の頭文字を取ったもので、日本語訳すると「ヨーロッパ言語共通参照枠」となります。B2はCEFRの6つのレベルの上位3番目で、自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的な話題でも具体的な話題でも、複雑な文章の主要な内容を理解できるレベルです。英検では準1級、TOEFLでは72~94、TOEICでは785~944、IELTSでは5.5~6.5に相当します。
次に、英語学位取得プログラムの大学で学ぶために必要な英語力は、一般的に高いレベルです。英語学位取得プログラムでは、英語での授業や論文の作成、発表などが求められます。そのため、英語での読解、リスニング、ライティング、スピーキングの能力が必要です。英語学位取得プログラムに入学するためには、TOEFLやIELTSなどの英語検定試験のスコアが必要となる場合が多く、前述のCEFRではB2以上が求められます。また、入学試験ではSATのスコアも必要であり、高いほど有利です。しかし、SATのスコアだけでは合否を決めてはいません。英語力だけでなく、自己表現力や批判的思考力などを重視しています。そのため、SATのスコア以外にも、英語のエッセイや推薦状、面接などが評価の対象となります。一般的に言えば、SATのスコアは1400点以上が目安とされていますが、これはあくまで参考値であり、必ずしも合格の保証にはなりません。合格するには、総合的な能力や適性をアピールすることが大切です。
このように、帰国後も英語で学ぶためには高度な英語力を身に付ける必要があります。日常の現地校での学習で英語力に磨きをかけていただきたいと思います。
(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
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