在外子女教育に携わって考えること(その3)
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
前回述べました通り、補習授業校を継続することは、特に永住者や米国市民の子どもにとって、難しいことですが、継続することによって、大切なものを得ることができます。
まず、日本の同年齢の子どもに準ずる日本語力が習得できます。中学部を卒業すれば、2136字の常用漢字すべてを学ぶことになりますので、日本で生活するのに支障がなくなります。高等部を卒業すれば、常用漢字の読みに慣れ、主な常用漢字を書き、文や文章の中で使うことを学習しますので、日本語をより使いこなすことができるようになります。また、文法、敬語、ことわざや慣用句、故事成語なども学びます。文法を学ぶことは正しい日本語を使うことに有効ですし、敬語を習得することは日本で大学生や社会人になった時にはもちろん、海外でも日系企業で働いたり、日本人と接したりする場合に必ず役に立ちます。さらに、国語に加えて、算数(数学)、社会、理科などの教科学習で学習言語を使用しますので、日本語のボキャブラリーを増やすこともできます。
永住者や米国市民の子どもは、英語を第1言語として使いこなしているでしょうし、現地校での学習で使用している言語の習得と同時並行で日本語の学習言語を習得できます。したがって、補習授業校の中学部や高等部を卒業すれば、バイリンガルになれると言ってもよいでしょう。しかし、日英両語が使いこなせるだけでは、真のバイリンガルとは言えません。日本の文化を理解していること、特に日本的な礼儀作法を身に付けていることが必要です。
補習授業校では、授業はもちろん、運動会や入学式、卒業式などの学校行事や、音楽会、文化祭、生徒会活動などの諸活動も、日本の学校に準じて行っています。このような学校行事や諸活動を通じて、起立、礼などの礼法、朝や帰り、始業や終業時の挨拶など、日本的な礼儀作法が自然に身に付いていきます。
このように、補習授業校を継続することによって、社会でも通用する日本語力と日本的な礼儀作法が習得でき、真のバイリンガルとなることができるのです。そして、真のバイリンガルとなった子どもたちは、グローバルな世界で活躍しています。
私の教え子たちも、アメリカの大学を卒業してアメリカに進出している大手日系企業に勤務している生徒、日本の大学を卒業して世界4大会計事務所のような外資系の企業に勤務している生徒など、さまざまな分野で活躍しています。私の娘も、アメリカの大学を卒業し、アメリカの医薬品関係企業に就職しましたが、日英バイリンガルであることを評価され、現在は東京支社に勤務しています。
すべての生徒に共通しているのは、幼少時より高等部まで補習授業校を継続したこと、日英両語が堪能であること、日本的な礼儀作法を習得していることです。さらに、大学で身につけたエンジニアリング、コンピュータサイエンス、バイオケミストリー、マネージメントなど専門分野を活かして活躍しているということです。現在、補習授業校で学んでいる子どもたちが、彼らに続くことを期待しています。
次回は、『一時帰国で学ぶ日本語と日本文化について』を掲載します。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org