在外子女教育に携わって考えること(その6)
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
私はアメリカの複数の都市の補習授業校の教員や学習塾の講師として、多数の帰国生の指導に携わりました。帰国生の多くは保護者の仕事の都合で来米するため、来米時の年齢や在米年数はさまざまです。年齢は若年化傾向にあり、未就学児や幼児、小学校低学年が多く、中学生や高校生のときに来米する家庭は少なくなっています。在米年数は2・3年から5年が多いですが、中には10年以上という子どももいます。
アメリカからの帰国生の多くは、平日は現地校に通学します。この現地校に馴染めるかどうかが大切です。また、帰国後に日本の学校に適応できるように、補習授業校で日本の教科書を使った学習を継続することや日本の学校生活を体験することも重要です。高校や国私立中学校への入学や編入学を予定していれば、受験対策も必要です。
幼児や小学校低学年時に来米した子どもは、現地校での学習内容も難しくなく、同級生とのコミュニケーションも取りやすいので比較的早く馴染める傾向があります。また、2年から3年暮らせば英語力はかなり向上し、ネイティブ並みになる子どももいます。しかし、小学校低学年は日本語や日本の学校教育の基礎を定着させる時期です。そのため、教科書での学習をしっかり行わないと、帰国後に日本の学校の学習についていけないという問題が生じます。また、帰国後の数年で、せっかく身に付けた英語を忘れてしまう傾向も目立ちます。
小学校高学年時に来米した子どもは、低学年の子どもより時間はかかりますが、多くが2年から3年で現地校に馴染めるようになります。英語力も向上し、英検2級や準1級に合格する子どももいます。一方、日本の教科書での学習を継続していれば、日本語力を維持することもできます。ただし、学習する漢字の数も増えますし学習内容も難しくなります。また、中学生のときに帰国することも多いので、学年相応の学習内容を修得するための努力が必要です。
中学生や高校生のときに来米した子どもは、現地校に馴染むのに苦労するケースも目立ちます。現地校の学習内容は難しく、英語の語彙力も必要になります。また、宿題も量質ともに負担が大きく、多くの子どもが帰宅後は毎日深夜まで宿題に追われます。また、思春期でもあり、現地校の同級生と仲良くなることも大変です。現地校生活が辛くなり、登校できなくなる子どももいます。しかし、現地校での学習を、歯を食いしばって頑張り、英語力が向上し、それを活かしてアメリカの大学や日本の大学の英語プログラムのコースに進学する子どももいます。また、この時期に身に付けた英語力は維持できる傾向があり、日本の大学卒業後に英語を生かした仕事に就いている子どもも目立ちます。
このように、来米時期や年齢、在米期間は様々でも、アメリカに暮らす帰国生がいろいろな苦労をしています。しかし、多くの日本人が経験できるわけではないアメリカでの生活は貴重です。帰国後も、この経験を活かしてほしいと思います。
次回は、『小学生で帰国する子どものアメリカ生活』を掲載します。
(写真:名古屋国際中学校・高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org