在外子女教育に携わって考えること(その8)
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
中学生で帰国する子どもたちは、小学校高学年や小学校卒業後間もない時期に来米していることが多いです。日本の小学校で学び日本語の基礎が定着しているため、日本語力が伸び悩むことはありません。しかし、補習授業校などで日本の教科書での学習を継続しないと、日本語での学力が伸び悩み、帰国後に適応するための力が身に付きません。また、来米後すぐに学ぶ現地校のエレメンタリースクールでは、英語に苦労しながらも何とか乗り切れるのですが、ミドルスクールに進学すると現地校の学習内容が難しくなり、宿題の量も増え、内容も難しくなります。個人差はありますが、中には帰宅後も現地校の学習に追われ、補習授業校の宿題や予復習の時間が取れなかったり、場合によっては両立ができず、補習授業校を続けられなくなる子どももいます。来米後すぐにミドルスクールに入学する子どもには、この傾向が目立ちます。
一方、小学校高学年よりも早い時期に来米し、中学生で帰国する子どもの場合は、現地校のミドルスクールに進学する頃には、すっかり現地校に馴染んでいることが多いため、そんなに苦労することはありません。しかし、どちらかというと英語の方が強くなり、補習授業校の教科書での学習内容がしっかりと身に付いていないというケースも見受けられます。
いずれの場合でも、中学生で帰国する場合には、帰国後の学校選びに苦労していることが目立ちます。もちろん、公立中学校は、自宅の住所が決まれば、いつでもすぐに入学できます。ただし、米国での生活がある程度長くなった子どもには、適応しにくい雰囲気のある学校もあります。例えば、とても礼儀作法に厳しかったり、自由さに欠けると感じることが多いようです。中には公立中学での学校生活に耐えられず、私立中学に編入するケースもあります。また、国語・数学・社会・理科・英語に加え、保健体育・技術家庭・美術・音楽の9教科の授業があり、米国では習っていないために戸惑うことも多いです。そして、部活動が厳しくて大変という話もよく耳にします。
中学卒業後に待っている高校入試も心配です。内申点とも言われる中学校の9教科の成績も評価に加えられるため、思うような成績が取れないこともあります。また、入試で受験する教科も国語・数学・社会・理科・英語5教科が必要という学校もあります。帰国後2年以内であれば、帰国生入試が受験でき、その場合は国語・数学・英語の3教科とか、英語と作文のみで受験できる学校もありますが、日本語での学力を重視する学校が目立ちます。
しかし、数年の米国での生活によって英語の方が強くなった子どもにとっては、このような入学試験は至難の業と言っても過言ではありません。その場合には、英語力を重視する入試を行う学校を受験しています。また、日本の中学校での日本語での学習に不安を感じている場合には、外国人のための日本語指導であるJSLカリキュラムを導入している学校や、英語で授業を行っているインターナショナルスクールやアメリカンスクールを選択する方もおられます。
このように、中学生で帰国する子どもは、来米後しばらくは現地校での英語の学習に苦労し、また帰国後も日本語での高校受験対策に追われる生活を送るということが目立ちます。ただし、日英両語での会話が流ちょうな真のバイリンガルになりやすいのはこのような子どもです。在米中の日本語での学習、帰国後の英語力の保持を心がけていただきたいです。
次回は、『高校生で帰国する子どものアメリカ生活』を掲載します。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org