高校生で帰国する子どものアメリカ生活

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在外子女教育に携わって考えること(その9)

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

高校生で帰国する子どもたちの多くは、小学校高学年や中学校の時に来米しています。来米後は、現地校のミドルスクールやハイスクールに通学することになりますので、とても苦労することが多いです。日本の中学校で英語教育を受けただけでは現地校での学習には通用しません。また、英会話の学習をしていた場合でも、先生や同級生とのコミュニケーションはできたとしても、授業を聞いて理解したり、教科書を読んだりすることは難しいですし、テストを受験したり、リポートを書いたり、発表したりすることは至難の業でしょう。中には、授業についていけないだけでなく、学校生活にもなじめず不登校になってしまう子どももいるくらいです。

日本の高校の授業

日本の高校の授業

もちろん、日本人など外国人が多い学校では、ESLのクラスに所属して、英会話や授業のサポートを受けることもできます。ただし、ESLのクラスの授業は、通常の授業とは異なりますので、学年相応の教科の知識を習得できないこともあります。また、日本人が多い学校では、現地校内でも生徒同士で日本語を使ってしまうことが多くなり、英語力がなかなか伸びないというケースもあります。

一方、小中学生で帰国する場合と異なり、帰国するための準備も大変です。高校に入学や編入学する際には試験を受ける必要があり、現地校での学習に加え受験対策もしなければならないからです。高校1年生の4月に入学する場合には、中学校での履修内容から出題される国語、数学、英語の3教科の試験が課されます。社会や理科が課される高校もありますが、試験がなくても高校入学後を考えれば勉強しておく必要があります。また、作文や小論文が課される高校もあります。高校1年生の4月を過ぎて入学する場合は編入学となります。国語、数学、英語の3教科の試験が課されることが多いですが、地歴・公民や理科、作文や小論文が課される高校もあります。出題範囲やレベルは、その高校の履修内容と同様です。つまり、帰国までに、入学・編入学試験に対応できる日本語での学力を身につけなければならないのです。

また、日本の高校に入学・編入学するためには、現地校でのクレジットの取得も重要です。9年生修了は高校入学の条件ですし、編入学のためにも、日本の学年に相当する現地校の学年を修了していることが条件になります。つまり、現地校の授業に出席し、課題や宿題を提出し、テストで合格点を取ることが必要です。そのためには、家庭での学習時間の確保が重要となりますが、一方で、帰国のための日本語での学習時間も確保せねばなりません。

せっかくのアメリカでの中学校や高校生活を謳歌しようと、スポーツや音楽、ボランティアなどにも参加することは良いことですが、このような活動のためにも時間が取られ、睡眠時間が削られている子どももいます。しかし、異文化の中で苦労した経験を糧にし、また日英両語で学習した語学力を武器にして、帰国後の大学進学や就職で素晴らしい成果を上げ、活躍している子どもたちが目立っています。このような先輩たちに続くことができるよう頑張ってほしいです。

日本の高校の部活動

日本の高校の部活動

次回は、『ますます多様化する高校卒業後の進路について』を掲載します。

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

●親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育──過去の掲載●

●「在米親子にアドバイス」日米の教育事情──過去の掲載●

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