多様化する高校卒業後の進路

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在外子女教育に携わって考えること(その10)

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

海外の高校卒業後に帰国する生徒の多くが米国からの帰国生であり、その大部分が海外駐在員の子どもです。しかし、近年では永住や米国籍の子どもが日本の大学に進学する傾向が目立っています。一方で、海外駐在員子女が米国の高校卒業後に米国の大学に進学するケースもあり、進路は多様化しています。

日本の大学生(イメージ写真)

日本の大学生(イメージ写真)

海外の高校卒業生の進路の一つが、卒業翌年の春に日本の大学に入学するルートです。春入学の帰国生入試は、在籍高校の成績証明書やTOEFL、SATなどのスコアなどの書類の提出に加え、学科試験の受験が必要です。試験科目は、概ね文系学部志望者には小論文と英語や国語、理系学部志望者には数学・理科と小論文が課されます。また、ほとんどの大学で面接も課されます。春入学を目指す高校生は、現地校で学びながら、これらの受験対策学習をする必要があり、両立が大変です。また、在外年数が2~3年と短い場合には、TOEFLやSATなどのスコアを伸ばすのにも苦労しています。また、帰国してからは、ほとんどの生徒が予備校に通学して受験対策学習を進めます。受験勉強は、私立大志望者は10~11月まで、国公立大志望者は10~11月または2月下旬まで続きます。このように負担は大きいですが、多くの受験生が第1志望あるいはそれに準ずる大学に合格しているという嬉しい結果となっています。

二つ目は、高校を卒業した年の秋に入学するルートです。秋入学の帰国生入試は、成績証明書やTOEFL、SATなどのスコアやエッセイなどの書類のみという大学が多く、高校を卒業してすぐに大学生になれるのが魅力です。ただし、現地校の成績やTOEFL、SATなどのスコアが合否の決め手になりますので、在外年数が長く英語力が伸びている高校生が、このルートに目を向けています。ただし、大学入学後、日本語で学ぶことに苦労しているケースも見られ、留年や中退をしてしまったという話も耳にします。

三つ目は、二つ目と同様に秋に大学に入学しますが、英語で行われる授業のみを受講して卒業できる英語学位取得プログラムを行っている大学・学部に入学するルートです。約15年前に文部科学省のグローバル30(国際化拠点整備事業)が始まり、その後のスーパーグローバル大学創成支援事業によって、英語プログラムを実施する大学・学部続々と登場しています。これらの大学・学部への入学方法は、秋入学と同様に、成績証明書やTOEFL、SATなどのスコアやエッセイなどの書類のみという大学が多く、英語で学び学位が取得(卒業)できるため、これまで米国の大学への進学を考えていた高校生も、日本の大学に目を向けるようになっているのです。しかし、日本の大学でありながら、留学生中心のコミュニティで過ごすことになり、卒業時期が5~6月ということもあり、日本での就職には苦戦している学生が目立ちます。ただし、外資系の企業や英語を使う職業では、十分力を発揮しています。

アメリカの大学生(イメージ写真)

アメリカの大学生(イメージ写真)

最後は、米国の大学に入学するルートです。米国生まれや米国生活の長い生徒が中心ですが、駐在員子女でもこのルートに進む生徒も現れています。米国の大学は、現地校での成績(GPA)やSAT、ACTなどのスコアなどで、合格できそうな大学が判断できますので、このルートを選択する駐在員の子どもがいるのです。中には、世界大学ランキングでトップクラスの大学に進学するケースもあります。ただし、学費面では留学生と同様に扱われ、州内出身の学生と比べ、高額の学費を支払わねばならないケースもあります。

このように多様化している高校卒業の進路ですが、アメリカの大学は学費が年々値上げされ、さらに円安ドル高による経済的負担が大きく、敬遠される傾向が見られます。一方、ドル建てて計算すると日本の大学の学費の割安感があることと、英語学位取得プログラムの実施大学の増加で、日本の大学に目を高校生が増加している傾向が目立ちます。

次回は、『帰国後の英語力の保持・向上について』を掲載します。

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

●親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育──過去の掲載●

●「在米親子にアドバイス」日米の教育事情──過去の掲載●

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