現在の補習授業校が抱える課題と永住や米国籍・二重国籍の子どもの課題と対策

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変わる補習授業校が抱える課題と対策(その2)

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

前回は、変化が見られる補習授業校に在籍する児童生徒について、ご説明させていただきましたが、現在の補習授業校では、どのような課題を抱えているでしょうか。

前回ご説明したとおり、補習授業校では駐在員などの子どもと永住や米国籍・二重国籍の子どもがともに学んでいるのですが、双方の学ぶ目的や日本語力がかい離しているということが課題となっています。そして、それらは学年が上がれば上がるほど大きく開いていきます。永住や米国籍・二重国籍の子どもには、小学校低学年を過ぎると、日本語力が伸び悩み、学年相当の実力が身についていないケースが増えるのに対し、上の学年に新しく編入する駐在員などの子どもは学年相当の日本語力があるからです。また、駐在員などの子どもは、帰国後に日本国内の学校に編入するために、海外においても学年相当の日本語での学力を身につける必要があるという目的があります。また、帰国後に進学する学校の入学試験や編入試験を受験しなければならない子どももいます。

具体的には、最近の補習授業校の小学校高学年や中学校の学年の教室では、学年相当の漢字が読めない子どももおり、その比率が高い場合には、教科書に沿った授業を進めることが難しくなってしまいます。また、授業内容が理解できないため、授業に集中できない子どももおり、授業の進行の妨げになることもあります。

日本の中学校の授業

日本の中学校の授業

では、永住や米国籍・二重国籍の子どもの課題には、どう対応すればよいのでしょうか。

永住や米国籍・二重国籍の子どもは、学年相当の日本語力を維持することが必要です。補習授業校は、日本国内の学校では1週間(5日)で取り組んでいる内容を、週1回(1日)という限られた時間で取り組んでいる学校です。教科書の内容を十分に理解するためには、家庭での学習が欠かせません。宿題にしっかり取り組むのはもちろんですが、予習や復習も大切です。教科書の漢字が読めないと内容も理解できませんので、教科書の音読を繰り返し行うこともお勧めしたいです。また、宿題や教科書の音読は子ども任せにせず、保護者が一緒に取り組むことが望ましいでしょう。そして、家庭内では日本語で会話したり、日本語のテレビやビデオを見たり、日本語の本を読んだりする時間を意識的に設けることも大切です。

本を読む生徒

本を読む生徒

また、補習授業校で学ぶ目的や意義を十分に理解することも必要です。子どもにとって、現地校以外に土曜日や平日の放課後に通学したり、現地校以外の宿題に取り組んだりしなければならないことは大きな負担です。保護者は、それでも補習授業校で学ぶ必要があるということを子どもに説明し、納得させなければ、辛い思いをして継続することが難しいでしょう。永住や米国籍・二重国籍のご家庭は日本への帰国を予定していないので、なぜ日本国内の学校の学年相当の学習を日本語で行わねばならないのかということについて、ご家庭で十分に話し合うことをお勧めします。そのためには、保護者自身が子どもを補習授業校で学ばせる目的や意義を明確にし、それを分かりやすく説明する必要があります。

次回は、駐在員の子どもの課題と対策について、ご説明させていただきます。

(写真:名古屋国際中学校・高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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