海外滞在中の英語力の向上
親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
日本から来られて帰国予定のご家庭では、せっかく英語圏での海外生活を経験するのだから、お子さんの英語力が向上することを期待していることでしょう。そのため、海外に来てからしばらくは、補習校など日本語補習機関に通学せず、日本語での学習よりも英語での学習を重視するご家庭もあります。中には、家庭内でもご両親とも英語で会話するようなご家庭もあります。

現地校で学習する小学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)
確かに、お子さんがいち早く英語に慣れ、現地校での学習を円滑に進められるようにするという点ではよくないということはありません。しかし、日本への帰国を予定しているのならば、日本語での学習を継続し、家庭内では日本語で会話したり、日本語の本を読んだり、日本のテレビやビデオを観たりすることの方が大切です。
平日はより多くの時間を現地校で過ごしているのですから、学年や個人差もあるものの、英語力は徐々に向上しますし、現地校での学習にも次第に適応することができます。しかし、その一方で、ふと気が付くと、漢字の読み書きができなくなったり、日本語での会話に違和感を覚えたりするなど、日本語力が低下していると感じることになるかもしれません。そうならないように、補習校など日本語補習機関での学習を継続し、ご家庭でも日本語で会話するなど日本語に触れることのできる環境を作っていただきたいと思います。日本語と英語での学習の両立はたいへんかもしれませんが、帰国後の日本の学校への進学のために必要なことなので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいです。

英語の面接試験を受ける中学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)
このように日本語力は、帰国後に進学する学校での学習についていける力をつけるということが必要だということは明らかですが、英語力はどの程度まで伸ばせばよいのかということをよく質問されます。現地校での成績は、日本の5段階評価の3に相当する成績(4段階なら2.4程度)であればよいですし、4段階で3以上であれば十分でしょう。また、国私立中学・高校への入学・編入学試験では、英検の合格級の提示を求めるケースもあります。高校入試や編入学では準1級合格、中学入試や編入学では2級合格だと有利になることもあります。大学入試においては、TOEFL (c) (※)のスコアが重要となっています。出願基準点としてTOEFL (c) のスコアの提出が必要な大学や合否判定に利用する大学があります。出願時基準点は公開されており、大学・学部によって異なりますが、概ね60~70点台で、中には80点台の大学もあります。合否判定の基準は公開されていません。ただし、過去の合格者のスコアから推測すると、旧帝国大学の東京大学、京都大学、大阪大学などでは110点、慶應義塾大学や早稲田大学など超難関大学では100点、GMARCHといわれる首都圏の難関私立大学では80点を超えることが必要です。
このように現地校での学習に励むとともに、英検やTOEFL (c) などの英語検定試験にも取り組むことをお勧めします。
(※)TOEFL (c) :Test of English as a Foreign Languageの略称で、ETSによって開発された英語力を測る資格試験。英語の4技能「読む」「聞く」「話す」「書く」の能力を測定し、4技能各30点の120点満点。
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
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