メリットだけでなくデメリットも理解して進学決定を

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日本の大学の英語学位取得プログラムへの進学

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

アメリカの補習授業校の高校生には、現地校卒業後、日本の大学に進学する生徒とアメリカやカナダなど海外の大学に進学する生徒がいます。保護者が駐在員として赴任した家庭の生徒の多くは日本の大学に進学しますが、中にはアメリカやカナダの大学に進学する生徒もいます。また、少子化や駐在員の若年化によって、駐在員家庭では高校生が減少しており、それに伴い日本の大学に進学する生徒も減少傾向になっています。しかし、これまではアメリカやカナダの大学に大多数が進学していた米国市民や永住者の家庭の高校生の中にも、日本の大学に進学する生徒が増加しています。それは、英語学位取得プログラムを実施する大学が増加したことによります。英語学位取得プログラムでは、すべての講義が英語で開講されており、日本の大学でありながら日本語を使わなくても卒業=学位取得ができますので、日本語に自信がなくてもよいからです。

学生寮で談笑する日本人学生と留学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)

学生寮で談笑する日本人学生と留学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)

英語学位取得プログラムが始まったのは、文部科学省が2009年にスタートさせた「国際化拠点整備事業(通称:グローバル30)」です。このプロジェクトでは、2020年までに30万人の留学生を日本に受け入れるという目標を掲げ、東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学を含む13大学に英語のみで学位が取得できるコースが新設されました。

その後、2014年から大学改革と国際化をさらに推進することを目的として「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)」が始まりました。これは、全国37大学が以下の2タイプに分類されて採択され、英語学位取得プログラムを実施する大学の増加につながりました。
タイプA(トップ型):世界大学ランキング上位100を目指す大学
タイプB(グローバル化牽引型):革新的な国際化に挑戦する大学

現在では、英語学位取得プログラムを実施しているのは、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO:Japan Student Services Organization)が2025年7月に作成した資料を集計すると54大学181コースとなっています。

このように増加している英語学位取得プログラムの大学ですが、英語のみで卒業できること以外にも以下のようなメリットがあります。
●大学によっては日本語での授業も受けられるので、バイリンガル教育が受けやすい。
●入試は書類・面接のみが多い。(理系は一部筆記試験あり)
●現地校卒業翌年の春ではなく、卒業年の秋から大学に入学できる。
●日本の大学、特に国立大学は学費が安く、円安ドル高の影響も割安感がある。

一方、以下のようなデメリットもあります。
●日本人の先生が多い大学もあり、中には英語の授業が聞きとりにくいこともある。
●大学内でのコミュニティーが小さく、日本人学生との交流が少ないこともある。
●卒業時期が5~6月なので、日本の企業・官公庁・団体での就職がなかなか厳しい。

留学生とともに実験をする日本人学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)

留学生とともに実験をする日本人学生のイメージ画像(筆者作成の生成AI)

就職のデメリット解消のため、4月から就職できるよう早期卒業制度を設けている大学もありますが、多くの学生が卒業翌年の4月に就職しているようです。また、日本の大学卒業生と同様に、人文学系のコースを卒業した学生は、社会科学系や理系などの実学系のコースを卒業した学生よりも就職が厳しいです。そして、卒業したコースに限らず、アメリカやカナダでの就職には苦戦している学生が目立ちます。

このように、英語学位取得プログラムの大学にはメリットだけではなくデメリットもありますので、それらを理解して進学を決めるとよいでしょう。

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米・中南米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
E-mail:info@ujeec.org

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