「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第31回
日本には以心伝心という言葉があります。文字や言葉を使わなくても、お互いの心と心で通じ合うことを指しますが、日本国内には日本人が圧倒的に多く、文化や常識というものがある程度同じ感覚なので、言わなくても分かることが多いのではないでしょうか。ただ、国によっては常識が違うものもあります。
昔、ニュージーランドでバックパッカーをしたことがあるのですが、その時にカルチャーショックを受けました。共同の洗濯場にいったのですが、ヨーロッパ系の人が、履いていた泥まみれの運動靴を洗濯機にポーンと入れてました。私としては、その後に下着など洗うのには抵抗がありましたが、ヨーロッパのどこかの国では靴を洗うのは常識だと聞きました。それぞれ考え方があり、標準が違いますので、何が正しいなどは決めるのは難しいかもしれません。
アメリカは移民国であり、いろいろな文化が混ざっています。アメリカでビジネスをするには、以心伝心を期待していては思うような結果を得られません。はっきり指示をしないと伝わらないことが多々あります。グロッサリーの話ですが、暑くなり、飲料が売れ出したので、ある店員さんに飲料を積み上げて売り上げを伸ばしなさいと指示したときの話です。グロッサリーでは、ある商品に注力するときには棚とは別に積み上げて陳列して他の商品より目立つように差をつけます。ただ、その店員さんは発注量を増やして在庫を切れないようにして、裏の倉庫に積んでいたようです。その店員さんからすれば、在庫を切らさないことが売り上げを伸ばす秘訣だと考えていたようで、お客さんにもそれが伝わると思ったのかもしれません。お客さんは、売り場的には変化がないので、購買意欲も変わらず、売り上げの変化はなかったようです。私は人に仕事を頼むときは、具体的に全体を説明し、依頼する作業の意味を理解してもらってから、行動してもらいます。そうすると応用にも対応できます。もし、この店員さんに、夏は飲料が売れるからお客さんに目立ちやすいように積んでセールしなさいと指示ならば、間違いが起こらなかったどころか「POPをつけたらどうですか」など何か新しいアイデアが生まれたかもしれません。
仕事の意味を理解してもらうことは大切だと思います。ただ、個人的には、以心伝心という言葉は好きです。暑い日に仕事から帰って、冷蔵庫にないはずのビールが冷えていたら嬉しいものです。
(次回は9月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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