体が発する痛み 「本当の痛み」とは?
安楽を求める我々は、つい「安易で楽な方」を選んでしまいます。その結果、人生で必要な機会を逃したり、後で後悔したり、先送りしてツケが回ってきたりして、事態が悪化することが多くあります。私自身も含めて大いに反省するところです。心身の健康に関してもこの人生原理があてはまります。本当の苦痛は、健康を維持できない自分、健康に戻れない自分に対する苛立ち、怒り、責念の苦痛です。
痛みには2種類あります。第一は物理的な痛みで、身体や心に現れる痛みです。第二は「自分自身に対する責念」が作り上げた苦痛です。(1)たびたび朝起きたら首が回らない(2)慢性的に肩が痛い(3)歩くと膝がガクガクする(4)階段を上れない|なぜ? その原因は、毎日苦痛に耐えながら生きる自己への偽り、ごまかしの人生です。本当は自分が「健康にほど遠い生き方をしている」と自問しながら、自己に対して憐憫、諦め、責苦の痛みです。これらは当院に来院する9割以上の患者に共通に見られる理由です。
世の中(社会)は変遷します。我々は新状況にもかかわらず、慣れ浸った昔ながらの「安易で楽な」人生を選びを繰り返してしまいます。やがて新時代と現実(適応できない自分)に構造的な問題が生じ、身体に痛みが生じることになります。バブルに浮かれた後の日本経済が長期のデフレ経済に落ちこんだのは、まさにその例でした。
同じように、体に慢性的な痛みが生じても、(1)一時的である(2)そのうち良くなる(3)ジムや運動で治そうとする(4)酒でごまかす(5)マッサージで和らげる(6)痛み止めを飲む。しかし、現実は多く人たちが2~3年も病院や鍼、カイロをまわったが治らない、ひどい人は7年も悩んだあげく来院します。
体が発する痛みは、本当は「人生の問題」を警告しているのです。重大さに気づかない、無視して先送り、安易な人生を選択した結果です。全ては心(意識)が生み出すものから来ており、安楽な人生の選択結果では将来、体の痛みを生じることになります。反対に、行き詰まった自己を破壊、安楽な人生、無考ロボットのような自分に終止符を打つ。代わりに新しい意識(心の持ち方)で新しい選択の下に、新しい使命目標を持ち、決意や行動を変えることが必要です。アベノミクス政策による、日本経済のデフレ脱却策などはいい選択の例です。
安易安楽、問題の先送り、毎日繰り返しの生活はやらない。他人任せの健康管理、金を払えば医者が治すものと決めつけたりせず、予防(運動・食事)をする人生選択が大切です。「難しい」と思われるものをあえて選択する。先送りしない、困難を乗り越え我が道を開き、強い人間を作ります。健康も同様で、安楽でない生き方を自分に与え課すと、心身の健康強靱な人間をつくれます。自分に制限を課し、食事の制限、車、バス、電車に乗らず歩く、ジムに行く、ストレッチをすることです。(次回は10月第1週号掲載)
〈プロフィル〉鈴木規正(すずき のりまさ) 指圧・整体師。「導院整体センター」院長。日本指圧医会/桜医会会員。米国で17年以上にわたって整体指圧を行い、慢性痛(腰痛、肩凝り、膝足痛)などの治療にあたり、また整体治療を通して心身の健康回復をサポートする。自身が開講する指圧教室では450人以上の生徒を育成。