身体に聞き、「手業」でする湧き上がる「自然修復力」
来院された患者はそれぞれ異なる症状を持っています。当院に来られる方の多くが「待ったなし、もうこれ以上の痛みに耐えられない」状態で駆け込んで来られます。中には数カ月・数年間あちこちの病院を駆けずり回った挙げ句に訪れる人も多いです。このような状態ですと、仕事のストレスなど精神的な問題も併発しており、痛みにまつわる多くの物語があります。
身体は正直なもので、筋肉や骨格のズレ・内臓器の状態をそのままに映し出すので、原因は患者の身体に聴くのが一番です。レントゲンやMRIのフィルムを持参する人もいますが、むしろ邪魔になります。なぜならば、熟錬した整体師の「手」は、患者の背中を撫でただけで数分内に全体を把握します。“身体全体のバランス、転位や捻転、筋肉の張り方・質・硬弱との関係、内臓器の冷・熱等”により、患者の体調が全体的に理解できます。筋肉の付き方、骨格のズレ方で職業、趣味や運動傾向、生命力(長寿)の強さ等、計測器械やコンピュター等の近代器具でも推し量れない領域まで直感できます。さらにレントゲンやMRI等では捉えられない兆候も捉え、アスピリンや鎮静剤などでも抑えられない頭痛、腰痛や不定愁訴を根本的に治す手助けをします。
人間という生命体の臓器、靭帯、筋肉、骨格は、それぞれ孤立しているわけではなく、また単に脳からの指令により動いてるわけではない。脳の意志とはかかわりなく、それぞれが経絡により互いに影響し合ながら生きています。人間は単に意識によってではないある生命の繋がりによって作られている。それは一言でいうと宇宙の「気」です。この気が体内にも流れていて、行き過ぎた生き方をすると停滞したり、止まったり、過剰に亢進し身体に現れます。整体の目的は、「手業」により身体のバランスを整えて患者自身の自己修復力を高揚することであり、そのために全体の「気血水の流れ」を回復することです。
慢性の痛みや不定愁訴等は、行き過ぎた生き方、自分の限界を超えた頑張りやストレスにより、身体が発する警告のサインですから、これを素直に受けて元に戻せばいいのです。そうすると身体が自分で修復・調整してくれます。当院の療法は「本人の治す力を引き出す」ことです。
【実際の事例】
Tさん(38歳、米国人女性、カメラマン)
忍耐強く明るいが、仕事によるストレス、腰痛が一種の職業病、身体が硬直・痛み出し、どうしようもできなくなったら必ず来院。身体は骨盤を基点にして「くの字」に曲がり、腰・腰椎の転位、左半身の突っ張りや硬直・痛み耐えられないと来院。靭帯筋肉の硬直を緩め、根本の原因である骨盤の歪みを取り、ズレ予防のエクササイズにより2回で正常に戻った。
B子さん(38歳、日本人女性、IT会社幹部)
原因不明の頭痛に悩まされ2年間、針・漢方・指圧院・各病院を回りレントゲン、MRI、CTスキャンなど全て試みたが身体に異状は見つからず。私が診ると肩が右転位・大幅な捻転が見られ、ズレた肩の土台に首(頚椎)が引っ張られ、捻れていた。そのため頚椎の筋肉・靭帯が慢性的に硬直、血脈(血行)を圧迫し、頭脳に新鮮な酸素を供給できなくなっていた。これらの根本原因は骨盤の転位(左右腸骨高4センチ差)で、身体全体がタオルを絞るように捩れていた。これでは身体が不調になるのは当然。骨盤調整を行い首肩のズレを取ると身体がフワッと軽くなるばかりでなく、数年来の「慢性的な頭痛」がウソのように消え、大変に喜ばれました。
(次回は10月6日号掲載)
〈プロフィル〉鈴木規正(すずき のりまさ) 指圧・整体師。「導院整体センター」院長。日本指圧医会/桜医会会員。米国で17年以上にわたって整体指圧を行い、慢性痛(腰痛、肩凝り、膝足痛)などの治療にあたり、また整体治療を通して心身の健康回復をサポートする。自身が開講する指圧教室では450人以上の生徒を育成。