〈コラム〉赤身肉・食肉加工品 食べ過ぎには注意!

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日本クリニック「医療の時間」第1診

牛肉・豚肉料理、ハムサンドイッチ、サラミのピザ、ホットドッグ…。これらのメニューがどれくらい頻繁に皆さんの食卓に上がりますか? 食べる頻度と量が多いと腸系のがんになるリスクが上がると言われていますが、食肉加工品と結腸直腸がんの関係について最近発表された研究結果をご紹介します。
英国にある世界がん研究基金(WCRF)が、現在、大腸がんにかかっている人への調査を行った結果、過去に食べた食肉加工品が1週間に70グラム以下であれば、がんは予防ができただろうと推定しました。食肉加工品70グラムというと、ベーコンのスライス約3枚分にあたります。子供は研究対象ではありませんでしたが、この結果から、子供たちが持参するお弁当のうち最も多いハムのサンドイッチは子供たちの将来の健康に悪い影響を及ぼすであろうと考えられ、両親たちに子供のがん予防対策の一つとして、食肉加工品の摂取やそれらを使用したお弁当を避け、代わりに野菜や脂肪分が少なめのチーズ、鶏肉、魚などの食材を使うよう呼び掛けています。
米国がん研究財団(AICR)は、以前から大人と子供に食肉加工品の摂取を避けるように呼び掛けていました。AICRによると、大腸がんのリスクを下げるには、1週間の赤身肉の摂取量を505グラム(調理後)以下にすべきとのことです。もし摂取量が505グラムを越えると、42グラムごとにリスクが15%上昇するそうです。ちなみに、米国人の食肉平均摂取量は週に1010グラムで、州によっては平均をはるかに超えるところもあるようです(米農務省より)。
なぜ腸系のがんの原因になるのか?
(1)赤身肉に豊富に含まれるヘム鉄(※)が結腸の内層で損傷を起こし、それが結腸がんになるリスクを高める可能性があると示唆されています。
※動物性の肉の赤い色のもととなる化合物。血液中のヘモグロビンと結びつきやすく、体の隅々まで酸素を供給するのを助けるため、貧血予防や体内酸素を定量に保つなどの効果がある。
(2)肉を燻煙(くんえん)、乾燥、塩漬け、化学保存料の添加などの保存処理をすると、がんの原因物質が形成され、細胞の損傷を起こし、がんの発症につながります。
◇  ◇  ◇
こういう研究結果を聞いて、肉を食べるのをやめなければいけないと思ってしまう方、やめる必要はありません(環境問題など、違う問題でやめるなら別ですが)。要するに、バランスが大事なのです。ヘム鉄は貧血に効果がありますし、動物性の肉の適度な摂取は、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB12などの貴重な栄養源になることも忘れないでくださいね。

DrMiyashita

〈今回の執筆者〉宮下麻子先生/Asako Miyashita, MS, RD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
東京都出身。コロンビア大学教育大学院にて、栄養教育学修士号を取得。日本ではマイクロビオティック料理学校のリマクッキングスクール師範科を修了。米国栄養士協会会員。専門は体重マネジメント、食物、アレルギー、食育、摂食障害、予防栄養学、スポーツ栄養学。

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