対話の力(12)〝アカウンタビリティ〟(その2)
こんにちは。COACH Aの竹内です。前号では、アカウンタビリティを持っていた代表的な経営者であるアップル社のジョブズ氏について触れました。今号では、私のクライアント先の身近な事例をご紹介します。
その日系企業では、取り扱っている商品力が非常に高く業績自体は伸びており、一見優良会社のように思えました。しかし、他の海外支社と比べるとそのスピードはかなり見劣りする状態でした。
そこで、日本人経営者や現地従業員とお話ししてみました。
日本人CEOの話では、部下のアメリカ人営業スタッフの話をよく聞いているし、定期的に時間を取っているとのことでした。
一方、その現地スタッフと話してみると、その上司の対応にうんざりしていたのです。聞くと、確かに時間は取ってくれているが、普段の活動状況のみを聴取され、唐突に出してきた売上目標にコミットするよう求められたりするとのことでした。その達成に向けて一緒に取り組んでいくという姿勢ではなく、「コミットするのか、しないのか」の二者択一を求められていたそうです。この部下にとって、このような二者択一は脅迫に近い感覚で、それ以外の選択肢を自由に考え、提案しようという前向きな気力を削いでいくものだったようです。
アカウンタビリティとは、上司、同僚、部下が力を合わせて目標を達成するのに有効です。このケースで言えば、二者択一ではなく、ゴール達成のために、より良い選択肢を増やし続けるような関わりができていれば、その現地スタッフのアカウンタビリティを引き出すことができたのかもしれません。
自分から変化を起こし、選択肢を増やしていくことは、誰でも自然にできるような簡単なことではなく、対話の中でそれを促されたり、引き出されたりすることが近道だと言われています。
次回は、コーチングがいかに部下のアカウンタビリティを引き出すのに有効かをご紹介します。
(次回は11月第4週号掲載)
〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人 への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職。
【ウェブ】www.coacha.com/usa/