着床前診断2 性染色体と22対の…
常染色体の着床前診断の落とし穴
アジアの発展途上国における着床前診断治療からの教訓:その1~
前回のリポートでは、人間が持っている22対の常染色体と二つの性染色体(X、Y)の計23対に起こる染色体異常“以外”の遺伝疾患も、着床前診断によって除去可能であることをお伝えしました。今回は、これら23対の染色体の着床前診断について説明いたします。
そもそも着床前診断とは何であるか:日本では基本的に認められていないこの技術は、受精卵の生体検査にあたり、受精卵の異常や性別が判ります。体外受精の過程で、受精卵を移殖前に体外で検査するものです 。
ここで大きな落とし穴があります。性染色体を含む23対の染色体異常を調べることを目的に受診する方のほとんどが健康であることです。前回にリポートした遺伝疾患をお持ちの患者様の場合は、資格を持った遺伝子専門カウンセラー、生殖内分泌科医、遺伝疾患に対する治療の担当内科医のチーム治療となる|と書きましたが、健康な方の場合、別の医療観点から注意しないといけない重要な点があります。
今リポートの着床前診断の目的は、①望む条件でかつ健康な②妊娠をする|という二つです。着床前診断によって①を確立し、着床前診断(受精卵生体検査)以外の、体外受精を伴う治療がより妊娠に結びつく質の高い治療であり、個人の生殖能力に応じた治療である必要があります。
この着床前診断は、前回リポートした家系からの遺伝疾患に対するものように、遺伝子の型を作成する複雑な手続きは必要なく、確立された一律の方法論に則り検査します。現在、三つの着床前診断の検査方法(技術)がありますが、それぞれ目的によって強み・特性があります。弊社は2005年から500件近くの性染色体(男女産み分け)および、13番、18番、21番(ダウン症)のトリソミー検査のケースをお手伝いしています。検査方法自体が議論の焦点ではなく、健康でご希望の、より多くの受精卵を作り、着床~妊娠の確率を上げるためには、より重要な要因があります。つまり、検査が可能であればよい、というものではありません。この2年ほど弊社のお問い合わせ欄に、アジアの発展途上国で廉価な性染色体の着床前診断治療を行い、望む結果が得られなかった上、ひどい副作用で危篤状態になったというご連絡が相次いでいます。
次回はなぜこのようなことが起きるのか、健康な方の着床前診断のプロセスがどうなされるべきかをリポートします。
(次回は2月2日号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/