〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第3回

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着床前診断3 性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断の落とし穴…

アジアの発展途上国における着床前診断治療からの教訓:その2~

前回のレポートで、性染色体を含む23対の染色体異常を調べる着床前診断の場合、健康な方は別の医療観点から注意しないといけない重要な点がある、と書きました。今回から順を追って詳しく説明していきます。
現在、FISH、PCR、CGHという3つの着床前診断の検査方法がある中、検査技術自体は遺伝子検査の専門検査場の技師が各方法に従って行うもので、通常の血液検査同様、標本をどの外注検査場に送るかによって結果が変わるものではありません。着床前診断の場合の標本とは、採卵後に受精させ、受精卵となった翌日をデイ1と数え始めてから日々成長(分割)していく過程で分割した細胞から取り除かれた一つの細胞を指します。この一つの細胞が検査場に送られ、それ以外の分割を行なっていた基盤となる受精卵は、成長を続けるために生殖専門医療機関に残ります。
着床前診断は必ず体外受精を伴います。受精卵に対し、体外で生体検査を行い、適切な受精卵のみを子宮に移殖するためです。着床前診断を伴う体外受精の妊娠率は着床診断の種類に依存するものではなく、①体外受精に関わる治療一環の質②胚培養士の質(受精卵を扱う胚培養士が着床前診断のために成長分割した受精卵から一つの細胞を取り出す作業の精密性)―に依存します。つまり、生殖医療の観点からも体外受精による妊娠率が高く、受精卵の生体検査を多く手掛ける専門性の高い胚培養士が在職している専門性の高い生殖医療機関で着床前診断を伴う体外受精を行なうことが妊娠成功率の決め手となります。
元来、体外受精は自然妊娠が難しい不妊の患者様のために生殖を補助する技術として使用されています。性染色体を含む23対の染色体異常を調べる着床前診断を望む場合、生殖機能は健康・正常で、体外受精理由の命題である自然妊娠が難しい不妊治療のための体外受精ではありません。不妊治療のための体外受精と同様、適切な管理のもとに治療が行なわれることは当然ですが、健康な卵巣のための適切な処方・投与方法が必要になってきます。これは、健康な卵子ドナー、卵子冷凍を希望する健康な女性のケースも同様のことが言えます。これを怠ると重大な副作用を招く可能性があり、最適な採卵は不可能、つまり着床前診断、妊娠にも影響が出ます。
弊社にお問い合わせがある廉価な着床前診断を求めてアジアに渡航した患者様は、この体外受精に関わる治療について軽視している傾向が強いようです。次回は体外受精のリスクを回避するために知っておくべきことをリポートいたします。
(次回は3月2日号掲載)

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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