一時帰国中の日本で学ぶ日本語と日本文化

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在外子女教育に携わって考えること(その4)

親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育

米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

アメリカの学校の長い夏休みには、長期間にわたり一時帰国する家庭が目立ちます。一時帰国中の日本での過ごし方の一つが、日本の学校での体験入学です。

帰国予定のある家庭にとっては、子どもが本帰国後に日本の学校に円滑に適応できるようにするために、学校生活の様子を知る良い機会です。また、同学年の子どもとの学力の違いを確認することもできます。ただし、国私立の中学や高校の受験を予定している場合には、学習塾で受験対策中心の学習をする方もおられます。

一方、帰国予定のない家庭にとっては、日本語の学習を集中的に行ったり、学校生活を通じて日本文化を学んだりする絶好の機会です。ただし、補習授業校などの日本語で学習を行う在外教育施設や学習塾などに通学していない子どもには、日本の学校の体験入学はあまりお勧めできません。国内の子どもと日本語で会話はできたとしても、授業内容が理解できないことが多いため、教室に座っていることが苦しいと感じるからです。また、受け入れ校側でも対応に苦慮するため、体験入学を断られることもあります。

いかだ川下り体験

いかだ川下り体験

しかし、本帰国の予定のない家庭には、せっかくの一時帰国中に日本語や日本文化を学ばせたいという強い思いがあります。我が家でも、娘は補習授業校で学び、家庭でも日本語で会話をしていましたが、英語を使う頻度の方が高いため、日本人らしくない言動が目立つようになったと感じ、アメリカでの生活では体験できない日本の文化を理解する必要性を感じていました。そこで、私が設立した米日教育交流協議会では、日本語・日本文化体験学習プログラム「サマーキャンプ in ぎふ」を企画し、2006年から2017年までの12年間にわたり実施しました。

活動拠点は、豊かな自然のある、私の故郷、岐阜県の里山の地域としました。楽しみながら日本語と日本文化を心と体で感じて学ぶことをコンセプトにし、約10日間から2週間の実施期間中には、築100年以上の古民家での生活体験、寺院での読経や座禅体験、里山の畑での農業体験、清流での川遊びやいかだ川下りなどの自然体験、岐阜城や神社仏閣などの史跡見学の他、民家でのホームステイや公立学校での体験入学など、多彩な活動をすべて日本語で行いました。また、私が実施期間中に心がけていたのは、参加した子どもたちに日本の礼儀作法を体得させることです。

寺院での座禅体験

寺院での座禅体験

初日のオリエンテーションでは、日本語で大きな声であいさつをすることを約束しました。お世話をしてくれる大人には、「おはようございます」、「ありがとうございました」などというように敬語を使うことも指導しました。また、家に入るときには脱いだ履物を揃えること、食前食後の「いただきます」、「ごちそうさまでした」の励行、和室で畳や床に座って食事をする時は正座をすること、話を聞くときは話す人の顔を見て聞くことや、途中で口をはさまないで最後まで聞くことなども徹底しました。これらの言葉や礼儀作法は、サマーキャンプに参加した子どもたちが大人になったときに役立っていると信じています。

次回は、『家庭での日本語学習の大切さ』を掲載します。

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

●親目線・教員目線で語る日英バイリンガル教育──過去の掲載●

●「在米親子にアドバイス」日米の教育事情──過去の掲載●

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