〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第4回

0

着床前診断4 性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断の落とし穴…

アジアの発展途上国における
着床前診断治療からの教訓:その3
廉価な医療には危険が伴う:卵巣過剰刺激症候群~

前回のリポートでは、性染色体を含む23対の染色体異常を調べる着床前診断を望む場合、生殖機能は健康で不妊という問題がなくても、体外にて受精卵の生体検査を行なうために体外受精の過程を踏む必要があること、そして、体外受精本来の命題である自然妊娠が難しい不妊のために行なわれる体外受精ではないため、特別な適切な処方・投与が必要になる、とお伝えしました。不妊のための体外受精を行なう患者様が適切な管理のもと治療が行なわれるのと同様、もしくはそれ以上に注意が必要です。
廉価な着床前診断を求めてアジアに渡航した患者様から、この数年、弊社に多くのお問い合わせが届いています。多くのお問い合わせで卵巣が腫れ上がった結果、胸下まで腫れが上がってきて痛み苦しくて動けなかった、呼吸困難に陥った、ホテルで誰にも連絡が取れず一人で苦しんだ、という内容です。まさにこれは、上記の必要医療過程が怠った結果の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれるものです。
性染色体を含む23対の染色体異常を調べる着床前診断を望む生殖機能が健康な女性が、体外受精のための専門医の管理のもとに一連の薬を処方されるべき過程を無視し、必要な検査なく軽率に投与を行なうことはOHSSにより罹る可能性が非常に高いというリスクを知って適切な治療方法を決断すべきです。
では、OHSSとは何かを説明します。体外受精を行なうためには、そのサイクル(月)で、2つの卵巣に見られる全ての卵胞を排卵促進剤によって刺激し成長させ、成熟した時点で、麻酔下にて採卵を行ないます。この排卵促進剤で過剰に刺激される症状を総して、OHSSと呼びます。通常の投与中でも、薬によって人工的に卵巣を刺激するため、卵巣が大きくなり通常の服のウエストがきつくなることも多々あり、卵巣の腫大自体は次第に解消されますが、大量の腹水や胸水の貯留が起こると、血管内の水分が減少し血液が濃縮されます。このように、症状は余り問題にならない軽度なものから非常に危篤な大事に至ります。次回は、更に詳しくOHSSについて説明いたします。

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

コラム一覧

Share.