着床前診断14 ~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法⑵~
2種類のエラーがあるが、どちらも 正常な受精卵が誤破棄のリスク
前回のリポートでは、着床前診断(PGD)と一言で言っても、実際は多々の検査方法があり、各方法論によりエラー率(誤り)があることをお伝えしました。
着床前診断の技術は、どの方法でもエラー率(誤り)があります。このエラー率をより低くし、更に、短時間でその結果を導く方法を見出すことが研究者たちの目標であるため、年々、日進月歩の目覚ましい技術が発表されています。
では、この着床前診断のエラー(誤り)とは何を指すのでしょうか?
着床前診断のエラー(誤差)とは、①誤った結果報告と②当該検査による結果が出ず不明―とされる二つの種類のエラー(誤差)があります。この二つの種類のエラーの足し算が総合エラー率となりますが、①には、False positive(過って問題がある、と判断されること)報告による正常な受精卵であるのに、問題がある受精卵である、と判断されるエラーと、False negative(問題があるのに過って問題がない、と通過すること)報告による異常な受精卵が、正常であると判断され報告されるエラーがあります。False positiveの場合は、正常な受精卵が破棄されることになり、False negativeの場合は、問題のある受精卵が移植される危険性があり、この検査を行うこと自体が無意味となります。また、②の場合も、正常な受精卵が誤って破棄されるリスクが包含されています。
数年以上前に生殖医療業界を制覇していたFISH法は衰退し、現在では米国の先進生殖医療クリニックではこの方法は使用されていませんが、FISH法を使用しての着床前診断が、採卵された数から最終的に移植にふさわしいと判断される受精卵の数が大きな減少を余儀なくされていた理由の一つは、この二つの種類のエラー(誤差)率が高かったためです。FISH法の誤った結果率は9.1%、そして、結果が判明しない不明である率が11.2%と報告されています。つまり、20%以上の総合エラーがあったことになります。
次回からは、現在、生殖医療クリニックで普及している着床前診断技術と、去年発表された最新技術の説明に入ります。
(次回は2月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/