〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第13回

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着床前診断13 ~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法⑴~

着床前診断にも多々の検査方法
エラー率が違うので必ず確認を

前回のリポートまでは、性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断を成功させるためには、良い状態の卵胞をより多く、安全に採卵することが必要で、細かいモニターと適切な判断が必要であることを説明してきました。今回からは生殖医療業界における最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法と、新しく報告されている体外受精サイクルを成功させる方法について順を追って説明していきたいと思います。
着床前診断とは、受精卵に対し生体検査を行い移植前に診断を行うことですが、「着床前診断」、もしくは「PGD」とひとまとめにされた概念のみが存在し、専門的な診断検査方法やエラー率(誤り)について、一般的に患者向けには説明がなされていません。生殖医療は、2010年のノーベル賞に輝いたロバート・エドワーズ博士の発明である体外受精によって扉が開かれた比較的新しい分野の医療です。博士の初の体外受精の成功は1978年で、試験管ベビーと呼ばれ、初めてその概念が日本でも報道されました。こうして生殖医療の世界が始まりました。その体外受精の技術を基礎とし、着床前診断も誕生しましたが、この新しい概念・技術である着床前診断は日進月歩しています。新しい検査方法論が年々発表され続けていますが、通常、エラー(誤り)があることを説明されていないことが多いようです。
これは、臨床研究結果として文献として、医学専門誌には公表されている情報ですが、生殖医療(不妊)クリニックでは患者に、どの着床前診断技術で、エラー(誤り)が何%あるか、など伝えないようです。つまり、一般的には、ひとまとめに遺伝子検査のための着床前診断、全染色体検査のための着床前診断、また着床前診断による男女産み分けと言っても、万能ではなく、完璧ではないことはあまり知られていません。
患者に対して、クリニックがどの方法論を採用しているかを説明していない場合は、診断にも多々の検査方法があるため、必ず確認する必要があります。各方法論によりエラー率(誤り)も違うからです。
男女の性別確定について言えば、コーヒーを飲めば男子が、電波の影響により報道局勤務だと女子が生まれやすい、というような言い伝えやおまじないから、体を酸性・アルカリ性にすることにより性別選択の効果がある、という説や、米国では医療文献でも無意義であると発表され効果が無いという概念も確立しているXY精子選別のためのパーコール法と比較して、一般的には、着床前診断は、“唯一”科学的根拠に基づいた、移植前、着床前の受精卵の診断であることは確かです。しかし、今まで、唯一の信憑性がある方法論であるだけに百パーセントの産み分けができると理解している患者が多いはずです。
次回は、着床前診断の種類とエラー率(誤り)について説明します。
(次回は1月11日号掲載)

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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