アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第42回
4年前の東日本大震災を今回のテーマにと考えていた矢先のネパールでの大地震。世界中どこでも起こりうる大災害は、21世紀の地球が乗り越えねばならない課題であり、国境を超えて助け合い、人種を超えて思いやり寄り添っていく必要性を改めて感じます。
「つなごう 心と心 走ろう 愛のために」は、3・11の現地である東北を訪ねてみたい、どうせ行くならアート作品をひっさげてと思い、企画。目的は、現地の人々、特に若者達に、「愛と夢を持ち、ネバーギブアップで前進しよう」という気持ちを伝えるため。
私もアート人生をかけた最大の夢、映画制作に向けてネバーギブアップで5年目。夢ははるか遠くですが、この間に未完成の完成作品はいくつもできました。その中の車シリーズを持って東北に行きたいと考え、アーティスト仲間に呼びかけています。
昨年制作した「ザ・ピンク“いいね”カー」は、1万枚の軍手を素材にして、労働への敬意と自然への愛を呼びかけた作品。今夏制作する「偉大な発明と矛盾」は、携帯電話が象徴する20世紀の大発明とその背後にある自然環境問題をテーマにしたもの。そして、もう1台「漂流木の歌」という、人と自然の再生を願う作品を構想中。この3台を台湾から日本に運び、震災から5周年となる来年の3月に展示、イベントを開催したいと考えています。
両親を亡くし、避難所で将来を嘆く祖父母に、「大丈夫、これからは僕達の時代、僕達が頑張るから」と語った高校生は、元気で頑張っているだろうか。「徳不孤必有隣(徳のある人は孤立する事はない、必ずその徳を慕って隣に寄り添う人がいる)」
台湾、日本、アメリカからアーティストや友達を募って、東北を訪ねる企画に協力いただける旅行社も探しています。興味のある方ご一報ください。
(次回は7月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】www.facebook.com/lin.shihpao