〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第89回

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私見“クールビズ” (4)

0711-10men-column-kenaoki今回も“クールビズ”がらみのお話。日本の官庁や大企業にお勤めの方々には、装いの落としどころとして普段のスーツ姿からネクタイを外しただけ…というドレスコードが暗黙の了解となっているそうです。日本式ビジネスコードについて、尊重は致します。しかし、普段のビジネススーツからネクタイを外しただけの姿。言葉は悪いですが、ちょっと酔っ払ってネクタイ外しちゃったという感じ(苦笑)に見えてしまうのです。どうしてなのでしょうか?
理由は、上着の肩と背中が体に対して正しくフィットしていないため、上着のフロントボタンを外しますと上着の身頃が左右に逃げて開いてしまい、シャツやベルトなど、胴回りがすっかりあらわとなってしまうことに原因があるのです。
日本製の比較的お求めやすい価格の既製品スーツは、生地の裁断も縫製も直線的で、ハンドアイロンによる生地の立体化と丸みを出す“くせ取り”はほとんどされておりません。洋服、紳士服の価値とは、実は鏡を正面から見てご自身の目では見えない後ろ姿に集約されているのです。そして紳士服の前部とは、女性の化粧のようなもので、時代の風俗を映す鏡、要するにデザインなのです。きれいで立体的な背中のシルエットは、既製服でもサイズが合えば可能ですが、やはりこのあたりのフィットの高さを実現できるのが、注文服の真骨頂なのです。個人個人型紙を起こし、フィッティングを繰り返す最大の理由は、肩と背中のフィットを完璧にしようとするその一点にあるのです。背中が美しく立体的にフィットしたスーツには逆S字型のカーブが表れ、男の存在感と色気が醸し出されるもの、と言われているのです。そう言えば某社ウイスキーのCMで“課長の背中”だったか…あったでしょ?(笑)。背中と肩がきちんとフィットしていると、たとえ上着の前ボタンを外していても前身頃が開かないのです。これを上着の“拝み”と言います。良い仕立ての一つの証なのです。男の背中、本当に大事なのです。これから注意して見るよう心掛けてください。それではまた。
(次回は7月25日号掲載)
32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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