「腰痛を予防する椅子」はあるのか?
毎日の何気ない暮らしにおいて、身の回りの環境や生活スタイルが健康や病気の予防に大きく影響します。よく聞くのはベッドを買い替えたり、新しいオフィスで座席が変わったのを機会に、腰痛がひどくなるケースです。整体治療によりせっかく腰痛が治っても、すぐに戻ってしまったということも聞きます。なぜでしょうか?
腰痛になる理由は色々あります。①股関節がずれて腰を捩ってしまう、②骨盤が一方に押し出されてしまっている、③骨盤が一方に回転をして歪んでしまっている、④仙骨(身体の中心部)のズレ、⑤腰椎のズレによる座骨神経痛やヘルニア等。これらを治すために整体施術、骨盤の正常整復をして身体バランスを回復することが大事なのです。 しかし整体により身体バランスを戻しても、患者さん達が普段の生活で、合わない椅子に座ったり、体をひねってコンピュータの作業をしたり、あるいは体が沈むような柔らかいソファーに長時間座り続けたり、一日中柔らかい座席クッションで運転したりすれば、再びズレが戻って痛みが生じることになります。
このような場合、重要なのは座る椅子の選択です。何も高価である必要はなく、20ドル程の木の椅子、座席が平で背もたれがシッカリとしたものであれば十分です。整体師は体のバランスを整復しますが、それからは患者さん自らがバランスを保つ努力が必要なのです。
【最近の事例】
Sさん(日本人女性、60代):数年前から腰痛があり痛みをこらえながら仕事を続けていた。各種の病院、カイロ、ハリ、治療院などに通院したが、良くならないので半ばあきらめていた。友達の紹介で来院したときは、明らかに不安と疑念(今までどこでも良くならなかった。どうせ噂だけで、治らないだろう)の表情が見られた。
初回の治療で、充分な説明、丁寧な施術により、かなり体が楽になり歩けるようになりましたので、本人は半信半疑になりつつも喜んでいました。同時に、椅子の重要性を説明して、必ず硬い椅子でフラットな位置に座るように指示をして、1週間それを守ってもらいました。すると2回目に来た時は骨盤の転位はかなり無くなり、本人の体調が良く、打ち解けた雰囲気で警戒心のある表情もなくなり、かなり強めに整体治療ができました。引き続き座り方に気をつけてもらうと3回目には笑顔で来院し、全身の最終施術をして終了しました。普通に歩けるばかりか、今までできなかった階段の上り下り、走ることも楽にできるようになり、感謝されニコニコ顔で帰られた姿がうれしく思いました。
整体師はズレた体を整復することはできますが、治った腰を維持するのは患者さん本人にしか出来ません。アドバイスを良く理解し、実行したからの結果であると思います。
(次回は6月7日号掲載)
〈プロフィル〉鈴木規正(すずき のりまさ) 指圧・整体師。「導院整体センター」院長。日本指圧医会/桜医会会員。米国で17年以上にわたって整体指圧を行い、慢性痛(腰痛、肩凝り、膝足痛)などの治療にあたり、また整体治療を通して心身の健康回復をサポートする。自身が開講する指圧教室では450人以上の生徒を育成。
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