“パンツ”について その4
引き続きサイズの合わせ方についてです。紳士服も基本的にゴルフやワインの勉強と同じです。ステップ・バイ・ステップで基本を学習しつつ、地道に実践を重ねていけば誰でもそこそこのレベルで装うことはできるものです。ですが日本の男性の多くは、紳士服の基礎について子供のころから学習するチャンスが全くないと言ってよいというのが現状です。ファッションセンスといった意味が分かりにくい感覚的な言葉はお忘れください。学習すべきはファッションではなくスタイルであり、クラシックなテイスト、そして流儀なのです。
ゴルフやワインに限らず、日本の男性諸氏には読書で独学の方がおられますが、上手になる確率は決して高くはないのです(苦笑)。ご自身をクールに客観視できない限り独学での上達は難しいのです。それよりゴルフと同じく私たちプロにご遠慮なくご質問をいただき、ご納得いくまで疑問を解消してもらい、かつ私たちのアドバイスを取り入れつつ、実践でトライアンドエラーをされるのが着こなし上達の近道であり、王道なのです。
さて、近年はパンツにおける奇数サイズ31、33、35が少なくなった気がいたします。正直、作る側の怠慢ですね。カジュアル向けパンツならまだしも、ドレス向けならば偶数奇数ともにフルに展開をしなくてはいけないと思います。
32や34、36のウエストサイズには32S、34Sと記された商品があるはず。このSはショートの意味で170センチ程度の身長の方向けで、同じウエストサイズの表記でも股上が最も浅くなります。L、R、Sと股上が浅くなるにつれて、股上だけでなくパンツ全体のシルエットが変わるのです。具体的にはお尻から下L、R、Sと膝幅と裾幅がより狭く細くなるのです。175センチくらいの方でもより細身のシルエットを好まれる方はSをご試着されてもいいかと思います。その代わり生地の用尺(長さ)が短くなりますので、カフ(日本ではダブルと言う)が取れないか、フレンチカフ(同じく偽カブラ、偽マッキンなどと言う)となる可能性があります。それではまた。
(次回は10月24日号掲載)
〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。