コーリン・ジャパニーズトレーディング代表取締役社長NPO法人 GOHAN Society会長 川野作織(3)

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イラク・クウェート侵攻で訪れた最大の危機

(11月26日号からの続き) 1982年に私はKORINをスタートさせました。88年7月に娘が生まれ、公私ともども幸せの絶頂。日本もアメリカもバブルで景気も良かったのです。出産に伴い少しスローダウンして休んでいたら、90年8月、イラクのクウェート侵攻が起こりました。戦争になると感じ「事業を縮小しなければ!」と、戦争下ではホスピタリティ関連事業は危機になると感じたのです。ミッドタウンのショールームを解約しようとすぐに思いつきましたが、なんとリースがあと5年半も残っていて貸主からは解約できないという返事。

弁護士に相談すると「年内いっぱいでNYから事業撤退する“計画”だとして、貸主と交渉しよう」と。“計画案”は変更になっても構わないので、実際には後でNYで事業を再開しても違法にならないとのこと、驚きました。9月から交渉が始まり、家賃は直接支払いませんでした。賃主は解約不可の一点張りでしたが12月31日に全ての荷物を出して部屋を空っぽにしたところ、1月2日に連絡があり、遂に解約できたのです。これで月に1万3500ドルの経費が節約できることに。湾岸戦争が始まったのは、その約2週間後でした。

潰すくらいなら縮小する

「もたもたしていたら間に合わない」とこの時強く学びました。もしも◯◯になったら…をいつも考え、先を予測して、バックアッププランを立てる。一度潰れてしまった会社を再度信用してもらうのは、ほぼ無理。最小限のサイズにしてでも、生き延びた方が良いのです。「会社の規模にこだわらない」こと、「今まで築いてきたものに執着心を持たない」ことが大事です。極端な危機に際しては、発想の転換が必要で、外からの助言が必要です。様々なプロの力を借りて、乗り切る。躊躇があるときは「現状維持のまま乗り切れないかな」と思っているものですが、出血したまま走り続けるのは精神的負担も大きいです。良くないです。できるだけ早く手を打ち、売り上げと経費の見合うところまで縮小するのです。

(第4章に続く)

kawano

かわの・さおり 1982年に和包丁や食器などのキッチンウエアを取り扱う光琳を設立。2006年米国レストラン関連業界に貢献することを目的に五絆(ゴハン)財団を設立。07年3月国連でNation To Nation NetworkのLeadership Awardを受賞。米国に住む日本人を代表する事業家として活躍の場を広げている。

(2016年12月10日号掲載)

●コラムまとめ●

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