~望まれる補習校の教育の変化
永住者の子どもの増加に対応した教育の見直しが必要
北米各地の補習校を毎年訪問していますが、永住の子どもの比率が高くなっているという話をお聞きします。外務省領事部の在留邦人調査データによると、2012年の北米地域の在留邦人数は472,835人であり、2002年の397,585人から19%増加しています。2012年の永住者数は197, 949人で、2002年の141, 290人から40%も増加しています。企業駐在員などの長期滞在者数は2002年の256,295人に対し2012年は274,886人で7%増にとどまっています。この結果、永住者の比率が高まっており、2002年の35.5%に対して、2012年は41.9%となっています。一方、長期滞在者の比率は2002年の64.5%に対し2002年は58.1%となっています。このように、北米地域では海外在留邦人に占める長期滞在者の比率が低下し、永住者の比率が高まっている傾向が見られます。この調査の在留邦人には日本国籍を有しない者は含まれていませんが、補習校には外国籍の子どもも在籍しています。したがって、中には永住者と長期滞在者がほぼ同数というような補習校もあるのです。
永住者の比率が高まることによって、補習校では従来のように帰国する子どもを主眼に置いた教育のみではなく、永住者のために指導方法や教育課程を見直したり、専用のコースの設置を検討したりするような動きもあります。永住者の子どもは海外生活が長く、長期滞在者の子どもと比べ、圧倒的に日本語での学習時間が短いため、どうしても長期滞在者の子どもとの学力差が生じてしまうからです。特に学年が上になるにしたがって、長期滞在者の子どもは日本の学校で教育を受けた期間が長くなるので、ますます永住者の子どもとの差が開きます。したがって、授業についていくことができず、小学校3年生から4年生への進学時、中学校、高校への進学時には、退学する子どもが目立ちます。一方、退学しないで継続している子どもも、授業が分からなかったり、テストができなかったりという劣等感を味わうことがあります。
多くの補習校は元々海外に進出した企業が資金を出し合い、帯同した子どもが帰国後に日本の学校に適応できるような日本語での教育を実践する目的で設立されました。しかし、先に示したデータのように永住者が増加している状況を考えると、永住者の子どもの教育も補習校の大切な使命であると思います。永住者の子どもの多くは日本の学校に入学することがなく、長期滞在者の子どもとは学習の目的が異なります。長期滞在者では、小学校高学年以上の子どもには帰国後の入試を意識した学習を望む方も目立ちます。日本語での学力差、学習目的の違いはありますが、補習校には双方を満足させられるような教育を実践することが求められています。難しいことではありますが、ますますグローバル化する社会で活躍できる人材を育成するために実現させたいものです。
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