〈コラム〉「そうえん」オーナー 山口 政昭「医食同源」

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マクロビオティック・レストラン(42)

日本レストランを辞めて「そうえん」に移りました。あるときオーナーに仕事はないかと尋ねたら、三月末で皿洗いが辞めると聞いて(まだ三か月もさきの話ですが)その後釜に頼んでおいたのです。日本レストランでは天ぷらを揚げていたので、給料は大幅に下がります。だが迷いはありませんでした。自分が食べたいと思っている物を食べ、自分が食べる物を客に出す。それほど、しあわせなことはないのですから。
ウエートレスはみなアメリカ人でした。マクロビオティックを厳格にしているひとはいませんでしたが、砂糖や乳製品を摂らないなど、食に気を使うひとたちが多く、大変、刺激を受けました。彼らの多くはヨガやマッサージやメディテーションのクラスを取っていました。彼らの影響を受けないはずがありません。のちに私も指圧の学校とメディテーションに行くようになるのです。
ウエートレスのひとりにヘザーという美しいブロンド女性がいました。仕事ももちろんできるのですが、すごいのは客の名前をほとんど全員知っていて、客に渡すチェックに、テーブル番号を書かずに一人ひとり客の名前を書くのです。レストランの性質から固定客が多いという理由もありますが、それだけ客と会話しているという証でもあります。店に入ってきた途端、「ハーイ、ジョオン!」などと言われたら、客もうれしいはずです。
問題は彼女のセクションだけがいつも忙しいということでした。チップは平等に分けるというのが「そうえん」のポリシーです。よけいにオーダーを取ったからといって、よぶんに取るわけにはゆきません。チームワークに影響を与えるからです。彼女は、それでも文句を言いませんでした。いつも仕事を楽しんでいるようでした。
(次回は2月第2週号掲載)

〈プロフィル〉山口 政昭(やまぐち まさあき) 長崎大学経済学部卒業。「そうえん」オーナー。作家。著書に「時の歩みに錘をつけて」「アメリカの空」など。1971年に渡米。バスボーイ、皿洗いなどをしながら世界80カ国を放浪。

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