〈コラム〉スキー&スノーボードのケガの予防 リストガードやヘルメット 膝プロテクターを常備して

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日本クリニック「医療の時間」第44診

多くのウインタースポーツファンが、2010年のバンクーバー冬季五輪を覚えていることでしょう。天候にも恵まれ大成功に終わりました。しかし同時に、大勢のケガ人が出たことも事実です。特にサイプレス山で行われた、スノーボードクロスとフリースタイルスキーでは、他の競技と比べても多くのケガ人が出ました。これまで、スキーについてはケガのリサーチが何度も行われてきました。医療関係者の間では、スキーのケガで最も多いのは、親指と膝内側の靱帯損傷というのは常識です。しかし、スノーボードのケガのリスクについては、歴史が浅いこともあり、リサーチデータがまだまだ追いついていない状態です。
しかし朗報です! 今年1月にスポーツ医学英国紙で、さまざまなレベルとレーススタイルのスノーボードのケガのリスクについて検証されました。調査結果では1432人のプロスノーボーダーのうち574人にケガがみられました。つまり約4割の選手が何らかのケガをしているということです。スノーボードがいかに危険かということが分かります。また技術レベルによって膝のケガが多く、重症度も高いことが分かりました。一方、初心者に多いのは手首のケガです。これは転倒時に手から着地することから発生しています。
競技別に見るケガのリスクは、スノーボードクロスを筆頭に、ハーフパイプ、ビッグエア、そしてパラレル大回転へと続きます。一般には大きなジャンプがケガの第1要因と考えられていますが、実は、事故はスピードが出ている状態で起こりやすく、中でもタイムを競うスノーボードクロスは、特に重傷になるケースが多いことが分かりました。驚くことに、かなりの高度で競うハーフパイプや、ビッグエアよりも危険だったのです。発生率に男女比はありませんでした。また、部位の比率は、膝(17・8%)、肩/鎖骨(13・4%)、頭/顔(13・2%)でした。
これらのデータを元に、今年のソチ五輪では、安全対策の新たなルールが設けられました。特定の競技の選手にはヘルメットの着用が義務付けられました。また、スノーボードのボードサイズに変更はありませんでしたが、ターンの際の転倒を予防するため、スキー板のサイズは少し長めに変更されました。
皆さん、スノーボードをする時は、スピードを出すのは、ジャンプよりも実は危険だということを覚えておきましょう。特に初心者は、リストガードを着けて、上級者はヘルメットと膝プロテクターを常備しましょう。もしあなたがスキーヤーなら、親指と膝のケガに気を付けましょう。これらのことに注意して、安全に楽しくウインタースポーツを楽しみましょう!(参照:スポーツ医学英国紙)
(次回は2月第4週号掲載)
drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。

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