着床前診断18 ~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(6)〜
生体検査はデー5かデー6の胚盤胞に成長分割してから行い、リスク回避
前回のリポートでは、現在最も普及している着床前診断(PGD)であるaCGH(アレイCGH)法は約5%のエラー(誤差)があるだけでなく、各受精卵に対する着床前診断の結果が出るまでに24時間かかるため、受精卵5日目のフレッシュ移植のために3日目の受精卵の細胞を採取する場合、分割がそれほど進んでいない受精卵本体への大きな負担と損傷のリスクあり、妊娠率を下げるものであることが明らかになってきていることをお伝えしました。
3日目の胚は、平均的に8分割となりますが、それほど分割が進んでいない八つの細胞の一つを採ることは、8分の1、つまり、形成され始めている胚の多くの部分が採られてしまうことになります。今まではデー3の生体検査が普及していたため、生殖分泌科専門医は患者に、“受精卵は生体検査を嫌う”こと、つまり生体検査を行うことにより受精卵の生存に対するリスクがありえることを説明してきました。それは、細胞採取の生体検査をデー3に行わなければ、本来は、健康で妊娠を導く受精卵であったとしても、生体検査を行うことによって、胚に打撃を与えてしまい、実際、正常である、という良好な結果で戻ってきてもすでに受精卵は成長を止めているという可能性があるからです。英語では〈Arrested〉とリポートに表示され、受精卵が成長を止めたということを意味します。デー1で受精卵となった後に成長を止める場合、多くの要素・理由がありますが、デー3の細胞が採取された生体検査後、成長を止める理由の一つには若すぎて分割が進んでいない受精卵に生体検査が打撃になったということも考えられます。
この臨床報告が普遍化してきた今、臨床医、及び、胚培養士らは受精卵を、デー5かデー6の胚盤胞に成長分割するまで培養を続けてから、生体検査(細胞採取)を行うようになってきています。胚盤胞になった受精卵から着床前診断のために一つの細胞を採取することは、デー3の8分割から一つの細胞を採ることと比較して、当受精卵の生存を脅かすリスクを回避できるのです。
しかしここでいくつかの論点があります。次回はこの論点について、説明していきます。
(次回は6月第1週号掲載)
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/