〈コラム〉違法負債回収行為への損害賠償

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礒合法律事務所「法律相談室」

相変わらず取り立て業者(collection agency)の目に余る違法回収行為が問題視されています。存在しない負債の回収の試み、負債者ではない第三者への回収行為、法的出訴期限の切れた負債の回収要求訴訟、負債者以外へのしつこい連絡、米国歳入庁(IRS)を名乗った脅し、等の取り立て業者の非尋常的な取り立て行為は後を絶ちません。
債権回収行為は連邦法及び州法により制限されますが、取り立て業者による迷惑行為、違法行為への被害者への賠償はさほど充実していません。ニューヨーク州の場合、違法回収行為の被害者が業者相手に法的手段を取る場合、いくつかの法的根拠があります。
(1)「連邦債権回収行為防止法(FDCPA)に基づく法定損害賠償請求」:取り立て業者の回収行為を規定するFDCPAと呼ばれる連邦法では、取り立て業者や取り立て行為を行う法律事務所等が違法に回収を行った場合、その負債者・被害者に法定損害賠償(statutory damage)を請求する権利が発生します。賠償額は違法行為の内容により決定されますが、最高額は時代遅れの1000ドルと規定されており、取り立て業者に違法行為を躊躇させる額ではありません。
(2)「FDCPAに基づく実損害額賠償請求」:違法行為被害者には法定損害賠償とは別に実損害額賠償(actual damage)を請求する権利があります。これには実損害額には違法行為に派生する、金銭的損失、苦痛、侮辱、等への損害賠償が含まれます。法定損害賠償請求と異なり、1000ドルの上限がありませんが、1万ドルの請求に対し、裁判所からの認定額は400ドル等と、請求額を下回る場合が多く、取り立て業者への金銭的負担は大きくありません。
(3)「ニューヨーク州一般事業法基づく法定損害賠償請求」:ニューヨークの州法(General Business Law)はFDCPAと同様に、ビジネスにおいて誤解を与える行為を禁止しています。取り立て業者が取立ての際に自身を法律事務所、と名乗る行為も禁止事項に該当します。しかし、FDCPAと同様に損害賠償額が1000ドル以下と規定されている上に、既にFDCPAの基下、賠償金の認定を受けた場合、重複賠償(double recovery)とみなされ、州法下での賠償額の認定は不可能になります。
前記以外にも判例法に基づく「精神的苦痛の故意による賦課を理由とする損害賠償請求」や「詐欺行為を理由とする損害賠償請求」の主張も可能ですが、これらは現実的には法的に十分な証明が難しく、多くの場合、裁判所からの認定を受けるに至りません。
(弁護士 礒合俊典)
(お断り) 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は各法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。
(次回は9月第3週号掲載)


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