礒合法律事務所「法律相談室」
「サブプライム住宅ローン危機」と呼ばれた2007年半ばから08年にかけ住宅ローンの返済延滞率が上昇し、銀行によるforeclosure(住宅差し押さえ・引き渡し強制執行手続き)の数が急激に上昇しました。
Foreclosureに直面している住人(所有者)から頻繁に受ける相談に、最終的に退去を強いられるまでどの期間対象物件に滞在できるかという質問があります。
ニューヨーク州では、債権者・銀行には、一般住宅物件所有者に対するforeclosureの申し立てを裁判所に行う前に、所有者への支払い請求・提訴予定通知の送達義務があります。通知の送達後90日後(もしくはそれ以降)、債権者・銀行は物件が位置する地区の裁判所でforeclosureの申請(提訴)を行います。一般的な民事訴訟と同様に原告(債権者・銀行)・被告(物件所有者)という形で進行します。原告には裁判所に提出された訴状を被告へ送達し、被告はその訴状に対する返答を行う義務がありますが、大多数の人はその返答を怠ります。
被告への訴状の送達後、原告は裁判所へ判事介入および08年に義務付けられた和解会議への申し立てを行います。この和解会議にて、通常両者はローン契約規定内容の緩和化等を裁判所の介入を通し話し合います。複数の和解会議を通しての示談が不可能な場合、原告は再び裁判所へ訴訟続行および返済金の算定の申し立てを行います。その後裁判所に指定された算定審理人による返済額認定の後、原告は裁判所へ物件引き渡し・売却強制執行判決の申し立てを行います。申し立てが許可された後、対象物件の売却通知が指定された新聞へ法規期間出版されます。その数週間後物件・所有権は第三者に売却されるか、もしくは銀行へ移り、いずれは所有者は退去を強いられます。しかし居座る住人(所有者)を強制退去させるためには原告による更なる申し立てもしくは別途手続きが必要となるためにさらに時間が掛かります。
言葉にすると全てがとんとん拍子に進行する印象を受けますが、現実的に物件の位置する地区によっては裁判所が原告の一つの申し立てを許可するまでに半年以上掛かる場合が多々あります。また前述の一般的な流れは訴状送達を受けた被告が返答を行わない場合であり、仮に返答を行い、抗弁を議論し、原告の申し立てに対し反論を申し立てる場合、掛かる時間はさらに長くなります。実際に支払い請求・提訴予定通知を受理してから物件を手放すまでに「5年間」以上ローン借入金、不動産税、管理費を支払わず、(投資)物件を継続的に所有し、高額な家賃を回収し満面の笑みで退去をした人も実在します。 (弁護士 礒合俊典)
(弁護士 礒合俊典)
(お断り) 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は各法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。
(次回は5月18日号)
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