〈コラム〉狙っている業界でうまくやれるか?|ファイブフォース分析 5つの環境の理解が成功の第一歩

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第3回

今からビジネスを立ち上げようと考えている方が、これから参入していく業界でうまくいけそうかそうでないかという判断をする上で、「ファイブフォース分析」というのがあります。少し昔の分析方法となりますが、今回はこの方法をご紹介いたします。
ファイブフォースというように、次の5つの点から分析します。
(1)業界内の競合
(2)新規参入の脅威
(3)代替品の脅威
(4)売り手の交渉力
(5)買い手の交渉力
例えば、日本のお菓子がアメリカにあるものと比べて美味しいと思い、個人で会社を設立して日本から輸入しリテーラーに卸すことを考えます。今は必要なライセンスなどのことは考えないとして業界を分析した場合、ファイブフォースは以下のとおりになります。
(1)業界内の競合
アメリカにはすでにたくさんの日系食品商社があり、日本で流行していて、輸入が可能な商品はすでにたくさんアメリカに来ています。
(2)新規参入の脅威
日本の食品がアメリカ人にも浸透してきたため、アメリカの大手食品卸業者も日系食品を扱い始めています。
(3)代替品の脅威
日本のお菓子については、他のアジアの国々で低価格の類似品があります。昔は質が悪かったのですが、今は改善され始めています。
(4)売り手の交渉力
製造メーカーとの交渉では、販路を広げるか大量に購入できるかが交渉の鍵となります。
(5)買い手の交渉力
リテーラーは消費者が買わないものを自分たちも買いません。輸入する商品に対して欲求が高くなくてはなりません。
この5つの環境を理解した上で、利益がたくさん出ると考えることができれば、この業界での成功の第一歩は踏み込めたと思います。
例えば、日本でアメリカで売れそうな製品を作っている無名メーカーを探し出し、アメリカでの専売権を取得してしまえば、競合の脅威は軽減されます。ひと昔前までは、業界内の競合の脅威さえ抑えれば成功した時代がありました。そして、代替品の脅威という力はほとんど考えられませんでした。しかし、今では技術がどんどん発達して、類似品という枠ではなく形にとらわれない発想で、まったく新しい代替品が生まれてきました。急速な勢いで携帯電話が普及し、ポケベルは売れなくなりました。出版社業界も電子書籍というものが誕生し、新たな局面を迎えています。
ファイブフォース分析を使い、業界を知った上で起業を考えると逆に違う業界の代替品が生まれるかもしれません。
(次回は5月5日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2012年4月7日号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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