「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第7回
“同じ品質のモノには同じような値段がついている”というのが、学校で習う一般的な考え方ですが、回りを見ると違う場合がたくさんあります。
1カ月前にビーチに行ったのですが、大きいカートを引っ張りながら、水を売 り歩いている人がいました。1本1ドルで売っていて、多くの人が複数の水を買い、大きい家族になるとダース単位で買う家族もいました。売り上げは絶好調のようでした。その帰りに道路を挟んだグロッサリーに寄ったのですが、同じ水が24本で3・60ドルで販売していました。1本たった15セントです。たぶん、水を売っていたあの人は、多くの利益を手に入れたと思います。このように、同じモノが異なる価格で取り引きされている状況を利用して利益を上げることを「アービトラージ」(裁定取引)といいます。
ビジネスをするにあたって、いち早く周りの環境や情報を察知し行動をするということは、とても大切です。そのためには機会を逃さないようにいつもアンテナを張っておくことが重要です。機会というのは、ずっと待ってくれるわけではありません。時代は急速に変化しますし、それが利益が高いビジネスであるほど競合他社もすぐに現れます。
先週に同じビーチに行きました。今回は先に水を買うために店に立ち寄ったのですが、なんと同じ水が24本で7・20ドルで売られていました。たった1カ月で2倍です。店の主人がビーチで1本1ドルで売られているのを知ったのか、水の売れ行きが良いから値段を上げたのか、それにしても大幅値上げです。もっと驚いたのは、ビーチで売っているカートの数です。1カ月前は1人しかいませんでしたが、その日は10人ほどいました。しかも、価格は2本で1ドルです。ビーチと店との価格差はあまりなくなり、利益は1本20セントになってしまいました。
このアービトラージが使えるのは、モノを売るという時だけではありません。人の価値も場所や環境によって変わってきます。日本でリストラされ、どこにも再就職できなかった人が、アメリカで起業して、成功されている話もよく聞きます。そういう人たちの共通点は、自分の能力を最大限に使える場所を発見し、行動している人です。残念ながら社会は不公平なことばかりです。得をしている人、損をしている人が存在していますが、それを嘆くのではなく、機会を逃さず、このアービトラージを利用して得をしている人になり、ビジネスで成功してください。
(次回は9月8日号掲載)
(「WEEKLY Biz」2012年8月11日号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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